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第126話 誕生日
サキが撃たれて、2週間が経った。
あれからリョウタは軽い任務をいくつかこなして、訓練をして、サキのところに通った。
(今日はサキの誕生日だ)
何も用意できなかったけど、全力で祝おうとアジトへ戻った。
ハルとアイリがご馳走を並べている姿に目を輝かせて急いで手伝いながらつまみ食いをした。
「ゆっくりでいいよ」
「はい」
カズキの声が聞こえて振り返ると、久しぶりにサキがカズキに支えられながら歩いていた。
「サキ!!お誕生日おめでとう!」
「待て待て!抱きつくなよ!」
飛び掛かりそうになった勢いをカズキに止められて急ブレーキをかけた。サキは照れながらありがとうと笑ってくれた。
弘樹やレン、サトル、ユウヒも集まり、ミナトがゆっくりと歩いてきた。
「後はアサヒだね」
「アサヒさん、最近どこいってるんですか?」
リョウタは最近のアサヒが不思議で尋ねると、ユウヒが勢いよく答えた。
「俺の親友のスカウトだって!」
「へー!ユウヒお友だちいるんだ」
「何だと!?」
「あ、じゃなくて、お友だちでスカウトできる人がいるんだってこと!」
「言葉足らずなんだよバーカ!」
イーッと威嚇してくるユウヒが可愛いくてケラケラ笑うと、子どもっぽいと気付いたのか、口を尖らせて拗ねていた。
(あれ、弘樹が元気ない??)
最近はレンの指導にも泣かなくなった弘樹だったが、何か考えごとなのかぼんやりしていた。
カランコロン
「ただーいまー!」
「父さん!どうだった!?」
「まだ関係作りだよ。」
手応えがありそうな笑顔にユウヒはアサヒに抱きついていた。
全員が揃って、サキの誕生日を祝う。まだ食べられるものが限られているサキは、ゆっくりとスープを口に運んでいる。目が合うとふわりと笑ってくれる。
(あぁ…好きだなぁ)
リョウタもニコリと笑うと、恥ずかしそうに目を逸らした。
ケーキを囲んで、切り分けて、食べていると、まだケーキが食べられないサキはヒマそうにみんなを見ていた。
アサヒはそんなサキを見て席を立ち、少し傷がついたケースを渡した。
「プレゼント、第一。」
「第一?」
サキはゆっくりとそれを開けると、ハッと顔を上げてアサヒを見た。アサヒはうん、と頷いて頭を撫でると、サキは下を向いてポタポタと涙を流した。
リョウタが駆け寄ると、裏蓋に書かれたメッセージを読んだ。サキの両親からのプレゼントだ。
「お前のパパとママが、これを見つけてくれって教えてくれたんだ。良かったな、サキ」
「…っ、はいっ…!っ、ありがとう、ございます、大事に、しますっ」
当時の限定品は、今や古いものだが、サキは大事そうに抱えて声を出して泣いていた。
アサヒも後ろを向いて目元を拭っていた。
「さぁ!ここからはプレゼントタイム!ボスの俺からはコレ!」
「わぁ!!これ!中距離用の最新!!」
サキは目をキラキラにして喜んだ。全員がプレゼントを用意していて、リョウタは冷や汗をかいた。
(やば!俺だけまだだ!すぐアジトに帰ってたし…お小遣いは無いし…)
必死に心の中で言い訳するも、リョウタの番になってしまった。
「リョウタは?」
「えっと、えっと…」
「??」
勢いに任せて、サキの頬にキスをした。
「後日!お届けします!!」
「「……」」
一瞬静まり返った後、全員が爆笑してリョウタは顔を真っ赤にして俯いた。
「リョウちゃん、お金なら貸したのに!」
「なんだよ!後日って!」
弘樹とユウヒに揶揄われて居た堪れなくなった。
(だって、毎日サキに早く会いたかったんだもん。お金もないし)
再び心の中で言い訳して、チラリとサキを見ると、キスされた頬を抑えて、嬉しそうに笑っているから、顔が熱い。
「ありがとうリョウタ。嬉しい」
「う、うん。どういたしまして」
わいわい騒いでいたが、カズキが点滴の時間だと言って解散になった。
コンコン
「サキ」
「リョウタ、どうした?」
「お誕生日、おめでとう」
「うん、ありがとう」
サキが手を伸ばしてきたのでそれを握った。
「リョウタ、欲しいもの、あるよ」
「何がいい?安いものしか用意できないけど」
「もう、持ってるけど…。リョウタが欲しい」
「…へ?」
「リョウタがいれば、全部嬉しいから。だから、キスも、嬉しかった。」
恥ずかしくて、口をパクパクと動かすことしかできない。サキは笑いながら、リョウタを見た。
「また、デートしたい。」
「うん!しよう!」
「旅行も行ってみたい」
「そうだね!」
「…早く回復しないと、な」
そう言った後、スッと眠りに入っていった。呼吸を確認して、手にキスをした。
「サキ、待ってる。早く元気になって」
リョウタはサキの手を撫でたあと、おやすみ、と囁いた。
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