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第129話 交換日記

弘樹の部屋から出てきたユウヒを捕まえて、ソファーに座るようとんとん、と隣を叩いた。 「ユウヒ、弘樹はどうだ?」  「んー、まだ、かな。でも少し表情が出てきた感じ。筆談とかメールでは元気そうだよ」  「そっか」  レンはふふっと笑って、ノートを広げた。  (さて、今日は何を書こうか)  ペンを口元に当てると、ユウヒは不思議そうにこちらを見た。  「レン兄、なにそれ」  「ん?弘樹との交換日記」  「交換日記?日記を交換すんの?」  「まぁそんな感じ。書くということは、話す言葉と違って見える。だから、整理もつくし、考えて表現できる。今の弘樹に必要なんだよ」  へー、と口を開けながらユウヒは隣に座った。ユウヒはたくさん消したであろう弘樹のページを見て微笑んだ。  「俺と話すの、楽しいって書いてある!」  「そうみたいだな。言われたとしたら流しちゃう言葉も、こうして文字にすると消えないからゆっくり受け止められるんだよ」  「あははっ!見て!リョウタからのシナモンロールに飽きただって!うけるーっ!」  「お前聞いてないな?」  ユウヒは嬉しそうに弘樹のページをめくっては、声に出して読んでいた。自分のことが書かれていれば喜び、知らないことは真剣に読んだ後、首を傾げていた。  『今は隣にユウヒがいて、弘樹の日記を真剣に読んでは幸せそうに笑ってる。  漢字はとばしてるみたいで、たまに首を傾げている。余裕があれば、読み仮名ふっといてくれ。』  レンはそう書いた後、レンの膝を枕にして眠ったユウヒの髪を撫でて、また書き連ねた。  『今日はサトルと出かけてきた。次の潜入先用のスーツを仕立ててきた。痩せてたからすっごく怒るんだ。体調管理には厳しい。俺よりもな。弘樹にはブラウンのスーツを着せてみたいんだって。変態だよね。』  「だれが変態だ!」  「あ痛!!」  風呂上がりのサトルに叩かれて笑う。サトルはユウヒが風邪をひく、とユウヒを抱き上げて部屋へと運んでいった。  『俺はね、嫉妬深いんだ。いくら仲間でも、サトルが他の人を想像したりすんのが嫌なの。こんな大人になっちゃダメらしいから、そこはマネすんなよ』  パタンと閉じて、弘樹の部屋のドアの下からノートを入れた。  しばらくすると、トタトタと足音が聞こえた。  (おやすみ、また明日楽しみにしてるよ)  ドアに向かって笑う。  恐らく部屋の中でノートを抱きしめて頭を下げているだろう弟子に挨拶をした。 

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