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第132話 帰る場所

サキの一つ一つが嬉しくてドキドキして、泣きそうになる。ちょっと焦ったように余裕のない愛撫も、まだ腫れてる傷口も、気持ちよさそうな声も全てが愛おしくて、完全に快感に飲まれない。理性がサキの全部を見たいと、焼き付けないと、と自分の熱が上がることを抑えて、体に刻む。  (次なんて、ないかもしれない。だから)  「リョウタッ…」  「ん?」 ごめん、俺ばっかり、と泣きそうな顔で見つめてきた。  (そうじゃない。ちゃんと気持ちいいから)  言葉にはならない。サキの顔を見て愛おしくて音にならなかった。込み上げるものが処理できなくて、ただ抱きしめた。  「リョウタ。ごめん、気持ちよくない?」  「ううん」  「がっつきすぎた…。」  落ち込むサキの熱も引いてしまった。ただ裸で抱き合って、サキのしっとりと汗ばんだ肌を感じた。  「怖かった…んだと思う」 「うん。ごめん。興奮しすぎて」  「ちがう。これが最後かもしれないって、思うようになっちゃった。」  がばっと離されて、顔を見つめてくる。サキは目を見開いた後、眉を寄せて、また強く抱きしめてきた。  「リョウタ、そばにいるから」  「うん、分かってる」  「だから、泣かないで」  「泣いてない」  「いつから溜め込んでたんだよ。あぁもう…ごめん。心配かけてごめん。」  痛いほど抱きしめられた。  サキの肌がどんどん濡れていく。鼻が痛くなってきた。 「リョウタより先に死なない。約束だ。」  「うん。そうして。俺、思ってるより耐えられないみたい。」  「リョウタ」 手を握ってゆっくりキスをした。まだ安心できないけど、サキの目に力が入った気がして、大丈夫かも、と思った。  「リョウタ、俺はもう負けない」  「うん」  「帰らないといけないから。リョウタのところにな。」  「そうだよ。バカサキ。」  サキがクスクス笑っている。今この瞬間を大事にしようと、リョウタも笑った。  「「あ」」  2人して熱が復活して笑い合う。  お互いを少し小馬鹿にしながら、笑いながら愛を深める。さっきみたいな理性はもうどこにもなくて、ただ目の前の獲物を求める獣のみたいに、必死で噛みついた。  「っふ、っ、ん、ッ!リョウタッ、リョウタ」  「やだ、まだ、ッ、さきに、イヤ、だめ」  「無茶、言うな、腰、止めろ、」  「止まんな、いっ、っぅ、あ、っ、あ、キ…たぁ…ッ」  サキの上に乗って、本能のまま、自分のいいところに当てて、ぎゅうぎゅう締め付ける。上から見るサキの気持ちよさそうな顔に、また中が蠢いてサキが叫ぶ。  「リョウタッ、も、」  「だめ、まだ、ダメ」  「く…そっ、」  突然サキがリョウタの腰を強く掴んで、下から腰を突き上げた。  あまりの衝撃に目の前に星が飛んで、ガクンガクンと震える。サキはお構いなしに突き上げ、リョウタは自分の体重で深く挿さる。泣きながら絶叫して、首を振っても、腰を引いても強烈な快感が止まらない。  「リョウタ、ッ、イこう、」  サキの声が聞こえて、必死に頷いた。サキがリョウタのトロトロと露をこぼす熱を激しく扱いた。  「ッ!!?ーーーーッ!!!!」  「く…ぅ、ッ…ンッ!」  ペチペチ  「おーい。リョウター。大丈夫か?」  「…へ?…あ、?」  「良かった。あーびっくりした。」  サキは苦笑いして頭を撫で、水をくれた。全身に力が入らなくてペットボトルのキャップが開かない。見かねたサキが開けて、飲ませてくれた。  「久しぶりなのにとばしすぎたな。」  「気持ち良すぎた。何も覚えてないや」  「お前今日鬼畜だったぞ。何回もイくの止められたし…まさかのドSか?」  「言うこと聞いて我慢するサキがドMなんだよ」  そう言うと、ギロリと睨んでくるけどそこも可愛くみえるから不思議だった。  「…お前こんな時は犬みたいなのに…」  「いつも犬っていうじゃん!」  「本能の時は、支配者っぽいよな」  「そうかな?」  「怖ぇよ。」  怖いと言いながら、サキはフワリと笑うから、意味が分からなくてとりあえず尻尾を振って抱きついた。わしゃわしゃ撫でられて満足だ。  「サキ、何かもう大丈夫」  「うん、良かった。」  「よっしゃあ!訓練頑張ろーッ!」  気合いを入れて大声を出すと、隣からレンの怒鳴り声が聞こえて、慌てて布団に隠れた。 

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