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第133話 表現

弘樹が部屋にこもって数日。  音も声も失ったけど、リョウタは前と変わらずに接していた。  「弘樹ーっ!おはようっ!」  ペコリと頭を下げる弘樹。いつも必ず笑顔だったのに、今は真顔のままだ。  「訓練付き合ってくれない?」  「…?」  「あ、そっか。」  弘樹は首を傾げて、ノートとペンを渡した。それに汚い字で「くんれん」、とまで書いた瞬間、弘樹がノートを奪った。  「弘樹?」  口が、パクパクと動くが音にならない。リョウタは必死に読み取ろうとするけどわからなかった。すると弘樹の目が潤んでいく。  (あ、弘樹、もう少しかも)  リョウタはぎゅっと抱きしめて、背中をトントンと叩いた。はじめは暴れていたが、だんだん落ち着いてきた。  「りょう…ちゃん…」  「っ!!」  久しぶりの声にリョウタは弘樹の顔を見た。眉を下げて子どもみたいに泣いていた。  「弘樹、おかえり。」  「りょうちゃん」  「うん、聞こえるよ。弘樹」  弘樹も聞こえたのかぎゅっとしがみついてきた。  「こわ…かったぁ…っ、」  「よしよし」  「くんれん、俺も、したい、」  「うん、やろう」  顔の表情もよく分かる。あの日号泣していた弘樹のままだ。リョウタは笑って頭を撫でて、手を引いて弘樹の部屋を出た。  リビングに行くと、驚いたハルとレン。2人が駆け寄って弘樹を抱きしめると、弘樹は嬉しそうに笑った。  「レンさん、組長…っ、声出たぁ」  「うん、良かった、良かった」  「心配かけやがって…っ」  ハルが涙目で怒る。ごめんなさい、と弘樹は泣きながら笑った。  「レンさん、交換日記たのしかった。ずっとしたい」  「うん、うん、」  レンは答えられないほど泣いて頷き、弘樹の頭を撫でた。 バタン!!  「ヒロの声がする!!」  ユウヒが勢いよくドアを開け、リビングにいる弘樹を見て駆け降りてきた。  「ユウヒ!」  「ヒロ!!」  飛びかかるように弘樹に抱きついたユウヒは、ハルやレン、リョウタの目の前で思いっきりキスをし始めた。レンに頭を叩かれるまで夢中になっていて、リョウタは顔を真っ赤にしてそれを見ていた。  「ヒロ!聞こえるよな!?」  「うん!ユウヒ、ありがとう!」  「バカやろう!心配かけて!!」  ユウヒはニシシと笑って、弘樹の頬に何度も唇を付けては何度も何度も弘樹に好きだと言い続け、リョウタは恥ずかしくなってリビングを出た。自分の部屋に戻って、爆睡するサキの上に乗って、たくさんキスをした。  「ん……?リョウタ…どした…?」  「弘樹、元に戻った」  「そっか…、よかった…」  寝ぼけたまま、リョウタのキスを受け止めて笑うサキにリョウタはキスをし続けた。  「よしよし。嬉しいな?」  「うん、良かった、良かった。」  「弘樹にこうしてキスしなかったのは褒めてやる」  「ん、ユウヒがキスしてた」  「ははっ!キスしたくなったのか?」  サキは笑ってリョウタの気が済むまでやりたいようにさせた。リョウタは満足すると、ニコニコしながら弘樹の元へ行き、訓練へと連れ出し、久しぶりに3人とサトルで体を動かした。  「ほらほらー弘樹!鈍ってるんじゃない?」  「っ!」  リョウタが煽ると嬉しそうに笑って、簡単にリョウタを避けた。相変わらず反応が早い。でも、ユウヒがその弘樹を追い詰めた。  「っ!」  「はい、そこまで。」  サトルがストップウォッチを見て止めた。ユウヒは弘樹を壁に押し付けたままニヤリと笑った。  「俺が、ヒロを守る!だから、お前より強くなってやる!」  リョウタまで思わず顔を赤くした。弘樹は目の前でそれを言われて、両手で顔を隠して照れていた。  (ユウヒってば愛情表現が熱烈…)  「おい!ヒロ俺を見ろ!」  「待ってよユウヒ、分かった、分かったから」  「何が分かったんだ!ほら、顔を隠すな」  強引だけどまっすぐ。 頼もしい愛情表現に、サトルもクスクス笑った。  「おい、バカップル。置いてくぞ」  「あ!待ってよ!」  ユウヒは慌てて弘樹の手を引いて、サトルとリョウタの隣に来た。弘樹は下を向いたまま、顔から火が出そうなほど真っ赤だった。 

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