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第137話 護衛
アイリの護衛を始めて1週間。
突然事態が動いた。
移動教室に、日直のアイリが1人で戸締りした時だった。
「アイリ!」
「サキ兄ちゃん!!」
一瞬だった。なんとかサキがアイリの手を掴み、引き寄せた。
「なんだ…こいつ。」
「お前こそ、部外者が何してる」
若い男だ。リョウタと同じくらいの若さ。先生風の服装で装ったそいつとサキと睨み合う。
「ケン先生…?どうして?」
「せ、先生?」
アイリの言葉にサキが驚いてそいつを見た。
「うん、大学生で…教育実習だって…」
「アイリさん、その人は部外者だよ?ほら危ないからこちらへおいで。」
「サキ兄…っ」
ぎゅっとアイリはサキの服を掴んだ。冷や汗いっぱいでガタガタ震えている。
爽やかな笑顔で笑うこのセンセイは変だ。
「俺のイメージする先生ってのは、まず生徒を守るはずだ」
「そう。僕の仕事だ。だからほら、おいで」
「生徒が危険であれば、そんな悠長なこと言わない。」
「…煽るなよ。力づくで来いってか?」
ネクタイを緩めてニヤリと笑う。
レンと近い、潜入センス。肝が据わった目。煽りにも動じない態度にサキも冷や汗を流す。
(アイリを守りながら…穏便に…)
「いいのか?ここで大事になれば、罰されるのは君の方だ。アイリさんの保護者でもない君は不審者以外何者でもない」
「そうかい。ならアイリはもう早退だ。行くぞ」
アイリの手を引くと、いつの間に隣に来たのか腕を取られた。
「先生は生徒を守るもの。実行させてもらうよ?」
「くっ!」
ギリギリと手首に圧がかかる。
(こいつ!潜入だけじゃないのか!)
「怪しい不審者から生徒を守らなきゃね?」
「くっ…っ!」
「サキ兄ちゃん!」
カツンカツン…
「何事ですか?」
聞き覚えのある声に振り返る。白衣を着たレンに目を見開く。
「ケン先生、どうしました?」
「あ、あの、部外者が。」
「不審者に1人で対応は厳禁です。生徒の安全のためにこれは基本。熱くなる前に主任を呼んできなさい。」
「でも、僕と上崎先生がいれば…」
先に潜入していたのか、レンがサキの味方だとは気付いていないようだ。レンはケンに近付き、ケンの手を取った。
「アイリに手ぇ出すな。」
「っ!?」
「いいか。潜入してんのはお前だけじゃないのは分かってる。この時期の教育実習はあり得ない。4人だな。」
「っ!!」
レンはニヤリと笑ってケンを見た。
「バレるとバラすは違うよな?さぁどうする?バレてるってことは、もう先回りされてんぞ?」
ガタガタと震えたケンに、レンはさらに意地悪な笑顔で隣にあった非常ベルを叩いた。
ジリリリー!!!!!
「サキ!アイリを連れてリョウタとヒロと合流しろ!」
指示に頷くと、レンはアイリを追おうとしたケンの服を掴んだ。
「逃がさねぇよ?ケン先生?」
非常ベルに駆けつけたのは、サトルだった。
「佐藤先生、指導教官なのに管理できてないですね。チョロチョロ自由に動いてますけど」
「子どもたちにつかまってたんだよ。全く…小学校は苦手だ…算数の何が難しいんだ」
不機嫌なサトルはケンを見て、物凄い圧でついて来いと言い、去っていった。
(2人とも…いつから?)
「アイリ、知ってたのか?」
「全然知らなかった…ビックリ…」
サキとアイリはぽかんと口を開けてしばらく固まった。
「おら、何してんだ。さっさと行け」
振り返ったレンに怒られて2人はいそいそと学校を抜け出した。
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