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第138話 長い夜の始まり

「はぁ、はぁ、」  「大丈夫?サキ兄ちゃん」  「大…丈夫っ」  学校が遠くなって路地に入り、アイリを下ろして座り込んだ。  (吐きそうっ、久しぶりに走った)  「わぁーサキ大丈夫か?バテバテじゃん」  「アイリちゃん!無事でよかった!」  弘樹とリョウタの声に安心して、サキは深く息を吐いた。弘樹はアイリを抱きしめて、リョウタはサキの頭を撫でた。  「サキ!よくやった!」  「レンさんが…いたから、助かった」  「あぁ〜!保健室の先生!サキさん、あのレンさんエロくないですか?」  「ふは!今思えばそうかも!」  クスクス笑って、サキはアイリの頭を撫でた。嬉しそうにアイリも笑っていた。  「アイリのお兄ちゃんたちは最強だ!みんなカッコいい!」  その笑顔に全員が癒された。  手を繋ぎながらアジトに戻る。  「サトル兄ちゃんが先生ってすごい不思議だった〜!」  「あれは驚いたな」  「サトルさんは超嫌がってたけどね」  アジトに帰ると既にアサヒがスタンバイしていて、和やかな雰囲気が凍りつく。  「父さん!」  「おお!アイリ無事か!サキよくやった」  「いや、俺は何も…」  「サトルが学校の全ての箇所へのカメラ設置を終えた。だから見てたよ。よくやった」  アサヒがふわりと笑って、サキの緊張がほぐれた。力尽きて床に座り込むと、リョウタがお疲れと抱きしめてくれた。 「おいおいへばんなよ。これからだぞ。サトルとレンが尋問してる。情報が来次第リョウタを現場に出す」  「はい!!」  リョウタが元気よく返事をするとアサヒが黒のアウターをリョウタに渡した。  「防弾になってる。さすがに今回は丸腰は即死だ。来て行け。あと内ポケットに銃が入ってる。これも迷わず使え」  「うわぁー!かっこいいー!」  リョウタはアウターを着てサキや弘樹に似合う?とポージングしてきた。  「ふはっ!リョウタ!調子狂うからやめろ」  張り詰めていたアサヒが吹き出した。一気に和んだ空気を感じて改めてリョウタのすごさを感じた。  アサヒも任務服で待機をしている間、全員用の銃の準備をしてはミナトの部屋に行き確認をしていた。  「おし。ミナトからの合図が出た。リョウタ、先に行け」  「はい」  「リョウタ、待って」  思わず引き留めた。  振り返った顔は任務モードで慌てて手を離した。  「いってくる」  「おう」  「リョウタ、頼んだぞ。後で合流だ」  「はい!」 勢いよく飛び出していったリョウタを見送ったまま立ち尽くす。  「サキ!ボケてると死ぬぞ!準備しろ」  「はい」  慌てて部屋に駆け込んだ。指輪を握って祈った。  (パパ、ママ、お願いリョウタを守って)  指輪にキスして、サキも任務モードに切り替えた。  リョウタのあの目を思い出して、どんどん冷静になっていく。 ガチャ  「やっと働く気になったか。あいつの援護頼んだぞ」  「はい」  「ハル!ここを頼んだぞ!」  「はいよ!」  アサヒとサキもアジトを出た。  今日の夜は、長い。  そう覚悟をした。 

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