139 / 191
第139話 無力
キーンコーンカーンコーン
「シズク!」
「ゆーひ、焦らないの。分かってる」
落ち着いてと肩を抱かれて少し深呼吸をする。ケータイに流れてくる状況。理解が追いつかなくて焦る。
(アイリは無事…父さんは動く…)
震える手を大きなシズクの手が包む。
「僕らのやるべきことを、精一杯やろう」
「…おう」
ユウヒはギュッとシズクの手を握ってアジトに戻った。シズクはミナトに呼ばれ、すぐにミナトの部屋にこもった。
ユウヒは任務着に着替えてリビングをウロウロしていた。
ピピッ
『開始』
戦況の合図を見てユウヒは立っていられなくて床に座って頭を抱えた。
「お兄ちゃん」
「アイリ…」
「みんなは、きっと、大丈夫」
「おう」
「大丈夫だよ」
アイリが抱きしめてきた。その小さな体は震えていて、ユウヒは自分が情けないと歯を食いしばった。
「ああ!大丈夫だ!絶対!!」
ニカッと笑うとアイリはボロボロと涙を流した。2人で抱き合っていると、それを包む温かい大きな腕。
「お前たちが信じないと、はじまらねぇよ。親父の強さは分かってんだろ」
「ハル兄」
「ハルちゃん」
「余裕で待ってようぜ」
頭を撫でられると一気に安心した。ハルは、作戦会議だ、と言ってアイリとユウヒに囁いた。
「アサヒさんから呼ばれたら、俺はここを離れる」
「え!?」
「そんなぁ!ヤダよ、ハルちゃん」
「ユウヒがここを守れ。みんなが帰ってくる場所だ。絶対、部外者を入れるな」
ハルの強い目にユウヒも力強く頷いた。
「アイリ、もしユウヒが闘うことがあれば、お前はミナトさんの部屋に行け。」
「分かった」
「間違えても自分もやろうとするな。全部が無駄になる」
「はい!」
「いい子だ」
ハルがアイリの頭を撫でて笑う。その後、ハルが初めて任務服に袖を通す。
「う…わ、カッコいい」
「そーかい。ありがとう」
ハルは苦笑いしてユウヒに答えた。ユウヒとハルはインカムを付けた。
『数が…多いっすね』
『ヒロ、応援行ける?』
『はい!』
劣勢のような戦況にユウヒは冷や汗をかく。
『あ、ミナトさん、数が多いってだけで、こっちは大丈夫っすよ!っ!しんどいけど、弘樹は違うところに!後3分で片付けます!』
リョウタの明るい声に安心する。
『了解。…アサヒ、見つかった?』
『あぁ…懐かしい顔なら。』
「「っ!!?」」
アサヒの声にハルとユウヒは目を合わせた。
『久しぶりだな、リツ』
『アサヒさん…が、現場に…?』
『お前んとこのボスが煽ったんだろ?いい機会だ。ぶっ潰す』
アサヒとリツが対峙しているのが分かって手汗が止まらない。
『ヒロ、リョウタ!体育館にいける?』
『『はい!!』』
『サキ、』
『俺も行きたいんですが…』
サキの声にハルとユウヒはミナトの部屋に飛び込んだ。モニターには、サキの後頭部に銃口が突きつけられている。
「桜井…っ、シンヤ!」
『兄さんまずはスナイパーから仕留めるね』
『リョウタ、ヒロ!サキのところへ迎え』
アサヒがギリギリと歯を食いしばる。そしてリツを睨み、銃を向けた。
『お望み通り、俺が殺してやるよ』
二つのモニターを見て、ハルとユウヒは息を飲んだ。
『兄さんがりっちゃんを殺すのが先か、僕がこの子を殺すのが先か』
『……。』
『どっちかな?』
「サキ兄!!!」
ユウヒはモニターに向かって叫んだ。
(俺は!見てるだけなのか!?何もできないのか!!)
ギリギリと拳を握った。
ともだちにシェアしよう!

