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第144話 重圧

パシン!!  「っ!」  「何してんのゆーひ…」  「!?シズク…?」  「アイリちゃんは?ねぇ」  顔面蒼白のシズクにユウヒはぽかんと口を開けた。  (あれ…いつの間にか寝てたのか?こんな…緊張した状況で…?) ぼんやりと目を擦りながら、シズクの質問に答えた。 「アイリはそこに….…….!?」  ソファーに置かれた大きなウサギのぬいぐるみ。ウサギのブランケット。慌ててかけよるとメモがあった。  『いってきます。 アイリ』  ユウヒはそのメモに首を傾げたが、シズクはそれを見て腰を抜かした。  「なんで!どうして!何してたんだよゆーひ!!」  物凄い剣幕で怒鳴られ情報がまとまらない。  (は?なんで?さっきまでそこにいたのに)  「これ…睡眠薬…」  シズクはユウヒから目を逸らし、テーブルの小瓶を見つめた。そこにはカズキとユウヒのグラス。飲みかけのお茶からシズクは察した。 「…今回は僕らよりアイリちゃんが上手だった。ゆーひとカズキさんには睡眠薬が盛られたみたいだね。…ほかでもない、アイリちゃん自ら。」 「アイリが自分から敵陣に行ったってことか!?そんな訳あるか!!」 ユウヒがシズクに怒鳴る。シズクはユウヒの目を見ながら考えた。 「いつ、だれに、何を唆されたのかはわ分からない。おおよそアイリちゃんが大人しく行けば皆助かるとか」  「そんな訳ねーだろ!」 「でも、もうここにはいない。今やるべきことは1つ。ここにいても何もできない。」  シズクがユウヒを見つめる。意図が分かったユウヒはコクンと頷いた。 「待て待てお前ら。焦りすぎ。シズク君?君はミナトさんにここを任された。なら、ここを守るべきだ。」  「レンさん…」  レンとサトルの登場に2人は驚いて固まった。 「シズク、不安だったろ。よくやった」  レンがシズクの頭を撫でると、悔しそうに唇を噛み小さな声で謝った。  「シズク、代わるから見てろ。俺はミナトさんの代わりをよくやってる。」  「はい」  「サトル、ユウヒ連れていけ。」  「いや、お前らは…」  サトルが心配そうに言うと、レンはニヤリと笑ってユウヒを指差した。  「やられっぱなしじゃ気が済まねぇよな?」  「っ!」  「いいかユウヒ。今は劣勢だ。今動かなきゃ一生後悔する。お前はまだ弱い。でも、できることがある。」  レンはシズクの肩を組んでポンポンと叩いた。  「お前が大将にはまだ早すぎる。親父もアイリもお前の手で取り返せ。そして、大事な親友も安心させてやれ。…こいつ今にも消えそうだぞ」  隣のシズクは下を向いたままだ。握った拳は目に見えて震えていた。  「つーことで、サトル頼んだ!」  「待てよレン。お前は…っ、」  「サトル。顔を立ててくれよ。俺は大丈夫」  レンはニカッと笑い、シズクをミナトの部屋に連れて行った。  「レンの覚悟、シズクの責任、全部背負っていくぞ」  「はい!!」  ユウヒはサトルの後を追った。  カランコロンとドアの音が鳴る。  静まり返った部屋に、レンはそっと息を吐いた。後悔で押しつぶされそうなシズクに同情した。  (こんな若い奴に…。アサヒさん余裕なさすぎだろ。)  モニターを見ると、ハルの他に弘樹が加勢していた。  (弘樹はオールマイティーだな。ハルが武術面の指導者だから息がピッタリだ。)  別のモニターには、倒れたままのアサヒに寄り添うミナト。必死に止血するアイリ。銃を構えて隙を狙うサキ。全員が今できることを必死でやっている。  「レンさん!」  シズクは別の部屋のモニターをアップにした。レンも目を見開いた。  「…よっしゃ!反撃だな!」  「はい!」  シズクの目に希望が宿る。反撃のチャンスまであと少し。 

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