150 / 191
第150話 幸せ
「いつまで寝てんのよ!」
「お兄ちゃんってば…気持ち良さそう」
聞こえた声にアサヒは飛び起きた。
目の前にはアイラとマヒル。きゃっきゃとはしゃいでは2人は寄り添う。
(あぁ…良かった。会えたんだな…)
「わ!?アサヒ何泣いてんのよ!」
「全く…どこが最強なんだか」
マヒルの呆れたように笑う顔も、アイラの太陽みたいな笑顔も、何者にも変えられない輝きがあった。
アサヒは2人を思いっきり抱きしめた。
「幸せになれよ!」
「「うん!」」
2人は手を繋いで光へとかけていく。
マヒルが振り返る。
「お兄ちゃんも幸せになって!」
「っ!」
「ミナトを幸せにしてあげなよ!」
アイラも続ける。だんだん2人の姿が見えなくなる。
「「ありがとうアサヒ(お兄ちゃん)」」
眩しくなって目を瞑る。重力を感じて、無理矢理目を開ける。
(あれ…?ここは…)
身体はピクリとも動かない。視線だけで横を見ると、顔色の悪い弘樹と、その隣にリョウタが眠っていた。
「気が付きましたね。良かった」
カズキが覗き込んで点滴をいじっている。話そうとしても声が出なくて苦笑いした。
「アサヒさんが起きたと知ったら、アイリもやっと眠れるでしょうね。」
「…は、…る、…は?」
「ハルはすぐに目覚めて、いつも通りです。松葉杖が必要ですが」
「わ…る」
「謝らないで下さい。それぞれの仕事をしたまでです。アサヒさんもハルも、責任を負いすぎですよ」
カズキはニコリと笑ってアサヒを見た。
「でも、アサヒさんが目を覚ましただけで、こんなにも安心するなんて不思議です」
(不安にさせちまったな…)
アサヒは指を動かしてカズキを近くに呼んだ。
「お前は…もう…好きなことをしろ。人を…たくさんの…人を…助けるんだ」
「っ!」
「人には…お前が…必要…だ」
カズキは驚いていたが、首を横に振った。
「こんな危なっかしい人たち、ほっとけないですよ」
カズキは、それに…と続け、あることを語った。
「本当か…?」
「はい!だから、僕の夢は託すことにしました」
アサヒは笑って、こっそり涙を拭った。
(アイラ、マヒル、俺…もう幸せいっぱいなんだけど…)
弱った体に染み渡る嬉しさを、どう処理していいか分からず、ふわふわしたまましばらくぼんやりしていた。
「ん…」
声が聞こえて、アサヒとカズキが音の方を見た。ググッと伸びをしたその人に2人は笑った。
ともだちにシェアしよう!

