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第151話 完治まで
リョウタはパチンと目を覚まして体を起こした。
「お腹すいた」
声に出してみると、笑い声が聞こえた。隣には顔が真っ白の弘樹、その隣には笑いすぎてわき腹を押さえるアサヒと、涙を拭うカズキ。
「おはよう」
「リョウタ、おはよう。夜だけど」
「うわぁー!朝ごはんと昼ごはん食べ損ねたっ!!」
悔しくて涙が浮かぶ。カズキは、待ってて、と笑って部屋を出て行った。
「お前…元気…だな」
「アサヒさん、なんだか喋るの遅いですね」
「おう…。あんま…声…でなくて…」
苦笑いして、目だけがこちらに向けられている。
(あれ、アサヒさん大丈夫かな?)
「大丈…夫…。心配…すんな…」
話すだけでもきつそうで、リョウタは眉を下げた。隣の弘樹は凍っているみたいに真っ白で、電子音が弘樹の様子を表していた。
コンコン…
「はぁい!」
「リョウター?起きたって?」
覗き込んだハルを見てリョウタは思わずベッドから降りた。
「ハルさん!」
「リョウタ待って!ハル、いろいろ骨折してるから突進しちゃダメ!」
嬉しさを噛み締めて松葉杖のハルを見つめた。後ろからカズキが美味しそうな食事を運んできた。
「さぁ、ベッドに早く乗れた人から配ろうかな」
「はい!はいはいはーい!」
ベッドに登って右手を上げると、みんなが笑ってくれた。受け取ったオムライスを見つめてリョウタは幸せいっぱいになった。
「いっただっきまーーす!」
モグモグ集中していると、ドアが開いた。
「リョウタ!」
「ふぁひぃ!」
米粒を飛ばして最愛の人を抱きしめる。お皿はカズキが下げてくれた。
ごくん
「サキ!良かった!」
「良かったはこっちのセリフだ。リョウタ…」
サキに抱きしめられて、リョウタは目を閉じた。サキの鼓動をゆっくり確認して、リョウタもサキの背中に手を回す。
「リョウタ、俺…お前を置いてった」
「え?」
「リョウタが倒れたあと、先に行かなくちゃいけなくて…」
「そりゃそうだろ。」
きょとんとしてサキをみると、サキは眉を下げて強く抱きしめてきた。
「こいつ…なりに…辛かった…んだろ」
アサヒがゆっくりと教えてくれて、リョウタは胸に顔を擦り付け、背中を撫でた。
「サキ、俺は大丈夫だよ。リツさんも、シンヤさんも助けてくれた」
「うん」
「俺はやっぱりリツさんには勝てない」
「リョウタ」
「でも、リツさんよりもサキのこと大好きだから、そこだけ勝ってる」
ニカッと笑ってみせるとサキが一瞬止まった後、顔が近づく。
「「うぉーーい!」」
ハルとカズキの声に、2人はビクッと跳ねた。じとっと睨むカズキと、呆れるハル。
「ふたりの世界になるのは、完治してから」
「「はい」」
サキが追い出されて、オムライスを完食した。
中途半端にサキに触ってしまったリョウタは悶々とした日々を過ごすことになった。
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