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第153話 受け止めてくれる人
ガチャ
「あ、ハル!明日の…わっ!」
いつもの懺悔タイムを終えたハルが部屋に戻ると同時に、松葉杖を落として抱きついてきた。慌てて支えると、ハルはぎゅっとカズキの服を握った。
「弘樹…起きた…」
「え!?本当?」
見に行こうとするのを止められて、カズキはハルの背中を撫でた。
(ハル…どうしたのかな…)
ズズッ
鼻水を啜る音がしてハルを見ると、顔をクシャクシャにして泣いていた。
「良かった…っ」
ハルが思い詰めていたのが分かる。あの日からずっと、目の前にいたのに助けることが出来なかったといつまでも責めていた。
「また…守れないと思った…っ、アサヒさんも…倒れて…っ、目の前でまた…っ、失うのかって…」
号泣するハルの頭を撫でて強く抱きしめた。ハルはトラウマになっていたのだろう。ハルの組長が殺されたのはハルの目の前。どれだけ責めて、どれだけの傷を抱えていたのか。
「守りたいものが…っ、多すぎて…っ、しんどいっ…」
弱音も珍しくて静かに聞いていた。きっと、吐き出せる場所はここだけだ。
「つかれた…っ」
限界のハルを見て、ゆっくりとベッドに寝かせる。一緒に横になって、近くにあったタオルで顔を拭いてあげて、髪を撫でた。
「ハル」
「…?」
「ハル、頑張ったね。ありがとう」
「っ!…っ、優しく…すんな」
「たまには甘やかしてもいいでしょ?」
感情がぐちゃぐちゃのハルに、良い言葉だけをかけ続ける。今のハルが、また立ち上がれるように。みんなの前で、優しく頼れるお兄ちゃんでいられるように。
「カズキ…っ」
「ん?」
「…ありがとう」
「うん!」
しばらくすると少し落ち着いたのか、恥ずかしそうにお礼を言ってきた。ハルを抱きしめて頼りない顔をしたハルの唇にキスをした。少し開いた唇はその先を待っていて、カズキはゾクゾクと腰が震えた。
「は…っ、ん、カズキ」
「ハル…ダメだよ、治ってから」
そう言うと、泣きそうな顔で見上げてくる。
(珍しいな…本当に。何が不安なの)
カズキは舌を絡ませて、ハルの服の中に手を入れた。傷口を掠めると、痛みで跳ねる身体。
(やっぱり、ダメだ。)
医者として心を鬼にし、ハルの身体から離れると、服を引っ張られる。
「痛くてもいいから…っ、頼む。そうじゃないと、俺が壊れそうだっ」
懇願されればすぐに医者としての自分を捨てて、ハルの恋人としての役割を果たす。
「悪化しても知らないよ」
「いいから…っ、お前が欲しい」
弱々しい姿に心が痛いのに、興奮する。もう見ることは出来ないだろうハルを堪能したい。そして、苦しそうなハルの理性を奪ってしまおうと、ハルの好きなところを撫でると、必死に声を抑えて恍惚の表情を見せる。
「ハル…綺麗だ」
ハルはそれに何も応えなかった。刺激に集中して、現実から逃げるように快感を追う。
(ハルが大事だって、伝わりますように)
何度か熱を吐き出したハルの足をゆっくり持ち上げて、怪我人には申し訳ないほどの大きさの熱をねじ込んだ。
「ーーーーッ!?」
目を見開いた後、ガクガクと震えるハルは、中だけでイってしまった。ぎゅうぎゅうと締め付けられて、カズキも汗が滲む。
「ーーッ、気持ちい…っ」
「っ!」
「もぉ…っ、わけわかんねぇ…っ」
「ハルっ、ハル、」
「あぁァ!!」
ハルは理性を飛ばして、カズキを求めた。久しぶりのハルの声がたまらなくて、ハルのイイところをたくさん攻めた。顔を真っ赤にして、顔を背ける時の首筋が綺麗で、噛み付いて、刺青にも歯を立てて、狭い奥を穿つ。
「はぁっ、はぁっ、はっ…は、」
「ハル…っ、好きだよ」
「あ、あ、っ、イくっ!も、っ、イく!」
また波が来たのか、足を抱えられているのに強い刺激から逃げようとする。ガッチリ捕まえると、涙をながしながら激しく首を振る。
「いいよ、ハル。イって」
「んーーッ!…ッ、ーーッァア!!」
ビクンッと強く跳ねて、脱力したハルはすやすやと眠っていた。
ピピピッ
カズキは体温計をハルから受け取ってため息を吐いた。
「全身痛ぇ」
「だから言ったでしょ?…体温37.8℃だから今日は寝てなさい」
「大丈夫」
「大丈夫じゃありません。僕に反論したいなら医師免許でも取ってきてよね」
「漢字も読めない俺ができるわけねーだろ」
「じゃあ寝なさい」
ハルは不満そうに布団を被った。カズキの匂いがふわりと香って少し落ち着いて目を閉じた。
(恥ずかしいところを見せちまったな)
ハルの羞恥を分かっているのか、カズキはハルの頭を撫でた。
「ハル、僕には甘えて良いんだよ。弱音も吐いていい。僕はどんなハルでも好きでたまらないんだから。受け止めて甘やかすからいつでもおいで」
優しく柔らかい声は、ハルの脳内にスッと入る。
(あぁ…カズキがいて良かった)
頭を撫でるカズキの手を握って手のひらにキスをした。
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