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第156話 託されたもの
「よーし!サキお願いしまーす!」
「おう」
サキの銃口が向けられる。サトルとカズキ、弘樹が見守る中、サキの銃弾を避ける。サキのこの鋭くなる目が好きだ。ゾクゾクしてリョウタはペロリと唇を舐めた。
パン! パン!
「チッ!」
悔しそうにするのも、一瞬で切り替えて集中し直すのもカッコイイ。
「遊んでるな」
「え?」
サトルは呆れたように腕を組んだ。弘樹も苦笑いして見ている。
「サキさんに見られて嬉し〜っていうのが溢れ出てますね」
「全くだ」
「はぁ…?よく分からないけど。」
カズキは眼鏡をかけ直した。
サキの弾が足に当たって色が付いた。その瞬間慌てたリョウタは次々に被弾してタイムアップになった。
「よし!俺の勝ち」
「くっそぉおおおーー!!」
悔しくてサキを睨むが、ご機嫌な笑顔が返ってきただけだった。
「カズキさん」
サキがカズキに問いかけると、カズキはニコリと笑った。
「うん!完治、だね」
リョウタとサキはハイタッチして喜んだ。
「焦るなよ。」
「…分かってます。」
「レンとの座学も修行の一つだ。」
「はい」
サトルは弘樹の頭を撫でた。
「サトルさん…ありがとうございます」
「あぁ」
「サトルさん!なんか弘樹に優しいー!俺にも優しくしてほしいー!」
「よし。帰るぞ」
リョウタを無視して、サトルは弘樹の肩を抱いてポンポンと叩いた。
「いいなぁ…弘樹、見込まれてる感じ…」
「お前貪欲だな…。まぁ、サトルさんが珍しい気はするけどな。」
リョウタとサキは2人を立ち尽くして見ていた。
「リョウタ、サキ。」
「「はい」」
カズキからの声に振り返る。いつも以上に真剣な眼差しを見て、2人はゴクリと喉を鳴らした。
「強くなってくれ。」
「「!」」
「ハルに、絶望を与えないでほしい。弘樹が寝たきりの時、ハルは消えそうだった。みんなの前ではいつも通りにしていただけだ。」
カズキは2人に近づいてきた。
「ハルは責任感の塊だ。アサヒさんの代理には適任。それは、分かる。でも僕は大反対だ。なぜなら本人は望んでいないから」
「っ!」
「若い君たちに託したい。」
カズキは深く頭を下げた。
サキとリョウタは顔を見合わせた後、カズキに飛び付いた。
「「任せてください!!」」
「わ、っ、ちょっ!ちょっと!」
ドタン!
みんなでコケて、ケタケタ笑う。カズキは安心したように笑った。
「カズキさん、俺らがやってやります!ユウヒも覚醒したし、アサヒさんにもハルさんにもゆっくりしてもらわないと。」
「はは!頼もしいよ!ありがとう」
ゆっくり立ち上がり、カズキは振り返る。
「まぁ完治したということで。今日から解禁ね。」
「「解禁?」」
「…あれ?イチャイチャしたかったんじゃないの?」
「「イチャ…ッ」」
2人は目を合わせたあと、爆発したように顔が真っ赤になった。カズキは面白がってクスクス笑って、先に行ってしまった。
「か、帰ろう」
「お、おう」
カズキのせいで変な空気のまま歩く。先ほどまでは訓練モードだった。でも、意識してしまった。指先が触れるだけで、2人の心臓は激しく脈打つ。そして目が合えば逸らせない。
「サキ…」
「…分かってる…」
「我慢できない…」
サキはリョウタの手を取った。
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