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第160話 若いから

「ん…?…」  「あ、起きた?」  ユウヒが目を覚ますと、馬乗りになる弘樹がいた。  「夜這い?」  「ど、どこでそんな言葉覚えたの!?違うし!」 弘樹は顔を真っ赤にしながらユウヒのネクタイを引き抜いた。 「寝苦しそうだったから…」  「わざわざ上に乗って?」  「横からだったら逆に締めちゃいそうで」 できた!と笑う弘樹の腕を引っ張って強く抱きしめる。  「ユウヒ…」  「いいだろ…?2ヶ月我慢したんだぞ」  「うん…」  「シンヤ兄ちゃんも、リツさんも元気だった?」  「んっ…。うん、元気…ッ」  弘樹は2ヶ月間海外出張だった。シンヤとリツの所で一緒に任務を行っていた。  「大丈夫?触られてない…?」  「当たり前…ッ、でしょ、」  「まぁな。シンヤ兄ちゃん、リツさんのことめっちゃ好きみたいだしな。」  弘樹の腰から撫で下ろすとビクビク跳ねる。  「見せられてた?」  「っ!」  「やりそう…ヒロばっかり構ってそうなリツさんだもんな。シンヤ兄ちゃん見せつけてそう」  弘樹のベルトを外して前を寛げると、弘樹は甘い息を吐いた。  「ま、ヒロもヤる気満々ってことで」  「あのさ…ッ、そりゃ、俺だって…若いわけで…溜まる…よ、それに…ッ」  「それに?」  「ユウヒの言う通りだったよ…ッ、毎晩毎晩、頭おかしくなりそうだった…ッ」  「あっはは!」  「早く触ってよ!」  セクハラで訴えてやると、悪態吐く弘樹が可愛くて、ユウヒは久しぶりの弘樹を堪能する。日に日に色気が増すこの恋人は、自分の魅力に気付いていない。今やレンの後継者となる存在。レンには負担がかかる重い任務は弘樹の担当になっている。それでもまだ自信がなくて、人前ではヘラヘラ平気な顔して笑っているが、落ち込んだり、悩んだりする。  「今回の任務はセックスなし?」  「うん…なし。あの人達のところにいるから、リツさんが気を遣ったのかも。…でも正直、あの時はマジで誰でも良かったのに」  きっとわざとだよ、と悔しそうにユウヒの首に噛み付く。相当意地悪されたようだ。  「とにかくお疲れ!」  ユウヒは噛み付くのをやめさせて唇を奪った。 余裕の無さそうな弘樹は、名前を呼んでと強請った。  「何だよ…?珍しいな?」  泣きそうな顔でユウヒを見下ろす弘樹。ユウヒを中に沈めながら、切なそうに笑う。  「ユウヒの声…ッ、ずっと、聞きたかった」  「ッ!」  「リツさんが…名前呼ばれて、抱かれてるの、幸せそうで…羨ましかった」  「ユウヒ、ユウヒは俺の…?」  「当たり前だろ!」  繋がったまま、弘樹を押し倒すと、目を見開いて弘樹がイった。まだ余韻で震える体を無視して、弘樹の好きなところをガンガン突いた。  「アァアア!!ユウヒ!待って!!」  「はぁっ!はっ!」  「んぅーーーッ!ッアア!!ダメェー!」 強すぎる快感に叫びながら泣く弘樹を見て、興奮が治らない。ペロリと唇を舐めると、弘樹がゾッとした顔をした。  「やだぁあああああ!!」  絶叫。  それでも止められない。弘樹しか見えない。  『ユウヒさ、エッチの時に目を紅くすんのやめてよ』  怖いんだよ、と苦笑いしていた弘樹を思い出す。怯える顔をしているということは、今がそうなんだろう。  「誰がやめるかよ」  「んぅ…ッ!ッアァアアーーッ!た、助け、ユウヒッ…助け…て!んぅ!ッあぁ!!」  「誰に助け求めてんだよ?俺はここにいるだろ?」  「ひぃ…ッ!…っうぐぅ!!!」  必死に逃げようとする弘樹を押さえ込んで、乱暴に腰を穿ち、視線が合わない弘樹に笑う。助けてユウヒ、と必死に手を伸ばしてくる。その手を振り払って、白くて細い首をに両手をかけた。  「っっつ!!?ーーッ!!!」  「あ…っ、きっつ…」 気疲れ、緊張、欲求不満、忙しさ、焦燥、多くのストレスは、目の前に弘樹が現れれば、全ての矛先が弘樹に向かう。 (受け止めてくれるのは、ヒロしかいない) 「はっ…はっ…はっ…」  「ーーッ!ーーッ!」  息ができずに、必死にもがく弘樹。  もしかしたらこれからの任務でこんな風に乱暴なセックスが待ってるかもしれない。  (俺以外が…ヒロに触る?絶対に許さない)  親指にグッと力を入れると、目の前が光る。  「…っ!…ヒロ…」  「ごほっ!ごほっ!!っごほっ 盛大に噎せているが、ユウヒは動けなかった。喉元に向けられたナイフ。  「…落ち着いた…?ユウヒ…」  「あ…。」  首に痣が残ってしまった。そしてユウヒの首から少量の血が流れた。  「紅くしないでってば。」  もー!っと怒る弘樹は、いつも通りだった。 「で、また萎えてるしー!」  何も言えなくなって、そのまま弘樹を見ていた。 「ユウヒ、我慢させてごめんね。ほら、おいで。大丈夫、俺は大丈夫だよ。」  カランとナイフが落ちて、弘樹をきつく抱きしめた。ユウヒはまだ力が制御できていなかった。気持ちが昂ると、勝手に残虐的な部分が出てしまうのだ。  「ヒロ…俺…」  「意識とびそうだったから…手荒い真似してごめんね、びっくりさせたね」  弘樹が首から流れる血をペロリと舐める。その顔にまたチリチリと込み上げてくる熱。  「久しぶりだから覚悟してたけど…いよいよヤバいねユウヒ。今日はさすがに殺されるかと思ったよ」  「ごめんなさい」  「まぁ、ユウヒでそういう場面の対策できるから正直有難い時もあるよ」  弘樹は熱に飲まれたように見えたのに、冷静で悔しかった。  「ほーら、おいでユウヒ。今度は優しくして」  「うん、優しくする。」  ユウヒは何度も何度も弘樹の首にキスしたり舐めたりして、なんとか痣が消えるようにと愛撫した。弘樹はクスクス笑っていたが、また甘い声が聞こえて、もう一度中に入って、弘樹の好きな所をゆっくりと、弘樹の感度を徐々にあげていくように、とろとろに溶かすように腰を使った。たまらなさそうに顔を真っ赤にして、微笑みながら弘樹は達した。ユウヒは何度も優しくキスをして、また弘樹を突いて、中に吐き出した。  「……ドSすぎるよユウヒ…」  弘樹は夜中に目が覚めて鏡を見ると、首が青あざになっていた。ベッドにはユウヒが子どもらしい寝顔で気持ち良さそうだ。しばらく見ていると、左腕の軽さに気付いたのか、探すように動かし、止まった。  (あはは!可愛いなぁ!)  「ひろ…?」  舌足らずな甘い声。答えないでいると、眉間に皺が寄る。  「ヒロ…早く…帰ってこい…よ」  そう言って布団を集めて抱きしめている。  「ヒロ…」  泣きそうな声に、弘樹の体が動いた。  「っ!?」  「ユウヒ!ただいま!」  「っ?…っ?…?」  寝起きで理解できていないユウヒにたくさんキスをして、脱がせて、無抵抗のユウヒをいいことに、弘樹はそのままユウヒとまた身体を重ねた。

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