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第167話 準備

サキは遅い朝食を終えてぼんやりとしていた。その隣にはレンが座り、サキは安心して口を開いた。  「レンさん昨日…」  「うん。アサヒさん暗殺のやつらの話?」  「俺が駆けつけた時、“やつら”はもう死んでて、リョウタが殺されかけてた。」  「……?完了連絡はあったけど…もしかして、その後の銃声は…お前が?」  「東野トキノリの兄、トキカゲが来ていました。」  「はぁ!!?」  レンは血相をかえた。報告がなかったリョウタの部屋を見るも、今朝は出てきていない。  「なんで報告しねぇ!?」  「リョウタのケアを優先しました。」  「ケア?」 何かあったのか、とじっと見つめられる。サキは言うのを少し迷った後、レンを見た。  「全く、歯が立たなかった。」  「っ!?」  「今は、警備会社の経営者だそうです。奇襲をかけたとはいえ一般人。俺をスカウトしてきました。」  「……やり方は変わらねーな。」  「リョウタがもし1人なら殺されていました。そのぐらい強かった。」  レンは頬杖をついてため息を吐いた。 「側近が弱すぎるから、アサヒさんが強いのが分かる、とも言っていました。」  「あちゃー…。まぁ、3徹後の睡眠中だったとは言えここまで言われたか。」  「はい」  サキはリョウタが出てこない部屋のドアを見た。久しぶりに見た悔しそうな顔。きっと最近思っていたのだろう。現実を突きつけられた。  「最近は激務だったから休ませたいが…」  バタン!!  「リョウタ…」  「おはようサキ!レンさんもおはようございます!お腹すいちゃった!」  いつも通りのリョウタに、2人はポカンと口を開けた。食卓に用意されたサンドウィッチを頬張ると、丸呑みしたかのような早食い。  「ごちそうさまでした!」  ぺこりと挨拶をすると、ランニング行きます、と出ていってしまった。  「……火がついた感じ?」  「飛ばしすぎてる気がする…少し様子を…」  「まぁ待て。サトルに伝えとく。だからお前は寝ろ」  「でも…」  「いいから。次もリョウタがトキカゲに遭遇した場合、お前が守れるように回復しとけ」  「はい!」  レンはサキを見送って、頭を抱えた。  「マジかよ…。アイツがこの世界に戻ってきたらヤバイぞ。」  サトルにリョウタのことを話し、ついてもらい、レンはミナトとアサヒの部屋のドアを叩いた。  ーーーー 「あーー!社長!昨夜からどこへ行ってたんですか!?もう夕方ですよ!?」  「あぁ、急遽出張が入ったんだよ。いちいち騒ぐなよ」  トキカゲは秘書にそう言うとだるそうに社長席に座った。すると秘書の斎藤イサムがネクタイを直しに来た。いつものお節介だ。  「よし!社長!完璧ですっ☆」  「お前はいつもうるさい。静かに出来ないのか」  「社長!元気が1番ですよ!」  ニシシと笑うこの秘書は、なぜか勝手に憧れを持って入社し、秘書にまで上りつめた。  「社長とお仕事できるなんて夢みたいです!今日は残り少ないですが、一緒に頑張りましょう!」  秘書をまじまじと見る。背丈や童顔な感じが昨日のあいつに似ている気がした。 「あ!社長!中途採用の応募がありました!僕より若い子ですよ!」  「いいね!若い人材が必要だよ。警備志望?」  「はい。これから鍛える必要がありそうですね」  トキカゲは履歴書を見て、面接の連絡を入れた。 

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