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第172話 立て直し

「藤堂と連絡がつかない…なるほど」  トキカゲはクラブオーナーからの悲痛な連絡を聞いて笑った。秘書に身元を確認させ、クラブを出た。 (桜井、アサヒの部下かな?) ギロリと裏口を睨み、銃を取り出した。  最近つけてきている、藤堂よりもボディーガードらしい人物。  パァン!!  コツコツと革靴を鳴らして、ドアを開けるもゴミや空瓶が散らかる。  「…掠ったか…」  一滴の血痕。対処も素早く行い、撤退も早い。  (できる奴がいるな…)  トキカゲはニヤニヤしながらタバコに火をつけた。  ーーーー  「サトル!大丈夫か!」 『あぁ…っ、すぐ戻る』  レンはバクバクする心臓を必死に抑えて、モニターを見る。顔を掠めた銃弾は1発だけで安心した。  「ミナトさん!どうしよう!」  勢いよく振り返ると、ミナトが抱きしめてくれた。ゆっくり深呼吸をして、ミナトの心音を聞く。  「レン落ち着いて。トキカゲはたぶんもう気付いてる。サトルも戻して出直そう」  「はい。」  「ヒロも回収済み。レンは少し休んで」  「サトルがきたら休みます。」  抱きついたままでいると、アサヒがギロリと睨んでくる。それに舌を出して、ギュッと抱きつくとズンズンやってきて引き離され、廊下に出された。  (ちぇ、アサヒさんのケチ)  レンは廊下をとぼとぼと歩き、玄関でサトルを待ち続けた。 ガチャ  「サトル!」  「っ?…レンか、どうした」  久しぶりに会ったのにサトルはいつも通りだった。しかし、左頬に血が滲む。  「サトル、心配した」  「そうか。悪かった。」  レンはサトルを抱きしめて、ペロリと傷口を舐めた。 「っ!」  「サトルの傷が治りますように」  サトルの首に腕を回して見つめると、体が浮いた。  「お前は…っ、本当に!」  「ん…っ、ふっ」  久しぶりにキスをすると、力が抜ける。抱っこされてなかったら崩れていただろう。部屋まで歩きながらキスをして、レンが我慢できなくなった頃にベッドに押し倒される。  「体熱いぞ。熱か?」  「知恵熱…」  だから大丈夫、とサトルを誘った。  優しい愛撫が堪らなくて、涙を流しながら強請った。 「う…っ、ぁああ!?」  「大丈夫か?まだ指…」  「ふぁっ、っあ!っあぅ!!」  頭もぼんやりして、レンはサトルに集中した。 大きな質量が入ってきて、レンはサトルの腕に爪を立てて、抗えない強力な快感に背を反らせた。  「ーーッァアァア!!!」  勢いよく吐き出して、目の前がぼやける。  (あ、ヤバ…落ちるっ…)  「…やっぱり高熱か。大人しく寝ろ」  「でも、サトル、まだ」  「俺はいいから。ほら。」  汗や精液、ローションを拭いてもらって服を着せられ、体温計が挟まれる。サトルがそっと抱きしめてくれた。  「レン、さすがに…しんどかった」  「ん…ごめん」  「お前を責めてるわけじゃない…ただ、弱音を聞いてほしかっただけだ。」  珍しく弱ってるサトルの話を聞きたいのに、瞼が落ちる。  ピピピピ 「39℃…」  サトルの呟きと共に、大きな手がおでこに置かれるとレンはスッと落ちた。  レンが寝たのを確認して、サトルはシャワーを浴びた。  (バレてる…よな。どうしたものか…)  あの銃はわざと外されたものだ。トキカゲが頭がキレることがわかっている。わかっているから事態が進まないのだ。潜入2人が撤退。これは今までになかった。そして、ブレーンとして動くレンが高熱。  (劣勢かもしれない)  サトルはしかめ面のままシャワーを止めた。 

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