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第180話 助けたい人

(なにこれ…!…ありえない!)  アイリは急いでレンの部屋に駆け込んだ。驚いているレンとサトルに勢いよく話した。その後にミナトとアサヒの部屋に行き、成分を伝えた。  「ケミカル…テロ?」  「うん!もしかして、シズク君の学校だけじゃないと思うの!すぐに伝えて欲しい!」  ミナトは頷いて、学校に問い合わせをすると、体調不良が続出しているそうだ。  アイリは真っ青になって、現場に行くと言い出した。  「父さん!ほっとけないの!これはすごく危ない!解毒剤も時間がかかる!すぐ調査をして元を探さないと!!」  「分かるけど落ち着け。他の任務もあるし、これは専門分野のやつらに…」  「遅いからこうなったんでしょ!?3日だよ!?体調不良が続出しているのに原因も特定できなかった!遅すぎるよ!」  だからアイリが、と飛び出そうとするのをアサヒがまた止めた。  「アイリ」  「苦しそうな人を見てられないの…。お父さん、分かってよ。」  「分かってる。ただ、1人では調査はできない。ミナトやレンに根回ししてもらうから…それまで待ってくれ」  アイリは首を振った。  「その間に悪化したらどうするの?」  「それは…」  「アイリしか気付いてない。それなのにアイリが動かないなんてありえない」  アサヒは目を見開いた。  意志の強さにアイラの面影を見た。  「ミナト、サトルを呼べ。アイリ、同行がいるのはいいだろ?サトルは医学的知識もある。」  「サトル兄ちゃん!うん!アイリ、安心する!」  アイリはやっと笑って、道具を準備する、と部屋に戻った。  「いいの?行かせて。子どもは門前払いだよ」  「…分かってるよ。でも、聞かないのも予想つくだろ。」  「たしかに。なんかアイラさんみたいだった。」  ミナトは苦笑いして根回しを行った。  ーーーー  「シズク君…?汗すごいよ?」  「……。」  学校帰りに勉強を教えてもらっていると、シズクの様子がおかしくなった。顔が真っ白になって、ぼんやりし始めた。汗が止まらず、声かけに反応もない。  「シズク君!?大丈夫!?」  フッと力が抜けて、シズクは倒れてしまった。アイリはカズキを呼んで一緒に診断をしたが、全く分からなかった。後に発熱と嘔吐が始まり、感染症を疑ったカズキに部屋から出されたのだった。  ーーーー  (アイリが治してあげるから!!)  サトルの車に乗って、アイリは気合を入れた。近くの病院の前を通るところで渋滞に捕まった。救急車さえも通れなくなっている。  (もう…こんなに被害が…!許せない!だれなの!?)  アイリはサトルからケータイを借りて、ミナトに連絡をした。  「ミナトさん、テロの犯人を特定して欲しい」  『うん…分かった。どうしたの?』  「病院前も渋滞してるの。絶対許さない」  『そうだね。僕らも動くよ』  電話を切って、渋滞の列の横をすり抜ける。ぐったりした小さな女の子と、必死な顔のお父さんを見て、アイリは歯を食いしばった。  (みんなを、助けるから!待ってて!)  シズクを助けること、からみんなに変わり、アイリの顔つきが変わった。  (落ち着いたようだな…)  サトルはバックミラーを見て、アイリに冷静さが戻ったことに安心した。  アサヒに頼まれた時に、落ち着かせろという指示だった。今は、目的地に着いたときに何をするのかを考えている様子だ。  (本当にこの子は天才だ。)  サトルはハンドルを握りしめて、前を見つめた。 

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