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第186話 待ってる人

シズクがゆっくりと目を覚ますと、隣には疲れたように眠りアイリがいた。  横には冷却シートやタオル、水、ビニール袋などが置いてあった。  (解毒した…?…さすがにきつかった)  僅かな違和感でお嬢様であるエイミーの手を叩いた。触れてはダメだと思った頃には目眩が始まった。  シズクはそっと手を伸ばしてアイリの頭を撫でた。  「頑張ってくれたんだな。ありがとう。」  寝息が細くて、唇にみみを近づけようとした時、ドアが勢いよく開いた。  「シズク!…っ!?」  「わっ?シズク!」  あの日ぶりのエイミーと、顔を真っ赤にするリョウタ。誤解されたと分かって苦笑いをし、2人を部屋へ入れた。  「シズク、会いたかった」  熱い抱擁にリョウタはまた顔を真っ赤にして目を逸らしている。慣れているシズクはポンポンと背中を叩いてあげた。  元気そうな姿に安心して微笑むと、エイミーは下を向いた。  「シズクにも、シズクの家族にも迷惑かけちゃった。ううん…学校の友達にも…。私は、自由にしちゃダメだと分かったわ」  「自由にしちゃダメだなんて、何も分かってない」  シズクは呆れてそう言い、エイミーに向き合った。  「エイミー。それは力に負けたということだ。」  「負けたんじゃなくて…」  「人が傷つくから、やりたいことができない。そんなのおかしいんじゃない?エイミーなら誰にも私の邪魔はさせない!くらい言うと思ったのに」  シズクはエイミーのブルーの瞳を見つめた。迷いがあって濁っている。  「でも…」  「考えるんだ。結果論は誰にだって言える。どうすれば今後防げるか、自分の志を曲げずに進める方法はないのか、考え続けなければダメだ。」  リョウタはおおーっ!と拍手しはじめたが、なんとなくだろう。  「エイミーならできる。考えることをやめてはいけない。力に勝つことを考えよう」  エイミーは大きく頷き、そして笑った。  「シズク、ありがとう」  「いーえ。」  「シズクに会えてよかった」  「光栄だよ」  「わたし、シズクとずっと一緒にいたい」  リョウタはお邪魔しました、とニヤニヤしながら出て行った。  「シズクのことが好きみたい」  エイミーの真剣な言葉を聞きながら、シズクは隣の寝顔を見た。  (起きてるな…)  「エイミーのことは好きだよ」  「シズク!」  (あ、悲しそうな顔になった)  「でも、僕は待ってる人がいるから。」  「待ってる人?」  「うん。僕自身も、その子も成長するまで。」  アイリのまつ毛が震える。  エイミーは残念そうに笑って、もう一度、会えてよかったと言った。  「今日の19時に国へ戻るわ。楽しかった!ありがとう!」  「気をつけて」  エイミーは苦笑いして、引き止めもしないのね、と寂しそうに出て行った。  「…盗み聞き?」  「ち!ちがうもん!起きるタイミングがなかっただけ!」  アイリは飛び起きて、真っ赤な顔で反論した。  シズクはクスクス笑ってアイリを抱きしめた。  「シ!?シズク君?!」  「頑張ってくれて、ありがとう。」  「うん」  「これは、お礼」  「うん」  2人はしばらくそのままでいた。 

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