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第5話
この場合、線香は時間計測ではなく、媚薬としての目的で使用されていた。
未緒はこの老人にすでに買われ、身請けされた身となっていたのだ。
老人は自身の商売の体裁を保つため、この愛人を邸宅には置かず、男娼館の別館に囲い込む形をとっていた。
この館には本館と別館がある。
本館と別館の間には細い川が流れており、そこを橋で渡る。
主はその別館を別荘の様に購入する方式になっていた。
「次はどんな太刀が良いかのう?」
ベッドの上で未緒の乳首を指で弄りながら、聞いてきた。
未緒は初夜から三日連続同じ太刀だったし、彼以外の大刀を知らないので返答に困ってしまった。
「おぉ、そうじゃ、明日は太刀会の日であったのう」
「…太刀会?」
「明日の夕刻から、本館のホールで部門別に太刀会が行われるのじゃ。そこでは太刀の太さや長さ反り具合を見分し、競り落とすのじゃ」
太刀とはこの業界では男の肉棒の事を指す。
聞いたことがあった。この館には競りと言うものが存在していることを。
未緒はこの老人への横流しがなければ、初物として競りに出されていたであろう。
自身は競りに出される前に初物の予約で、今の主人に買われた。
これはラッキーだったのだろうか?
未緒はまだ競りを見たことがなかった。
「もちろん中出しせんよう、この館で教育された太刀じゃ。そうじゃ、そうじゃ、明日は未緒にあった太刀を競りに行こうぞな!」
そう老人が告げると、外で待機させたばかりの護衛を呼び戻した。
「明日は、太刀の競りに出るぞ!参加申し込みを済ませてこい!」
「はい。榊様」
「…おぉ、それと未緒に初夜に着させた着物と花飾りを用意しろ!」
一瞬、未緒は体がビックとした。
初夜の日、あの時の前儀指導を思い出しまったのだ。
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