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第6話
未緒が香游魏の館に始めてきたあの日。
馬車で町から少し離れた山へ行く途中、雑木林を抜けた先に洋館があった。
そこは林を切り開いて作られた洋館だった。
川が流れているのであろう、水音がした。
大きな洋館の左右後方に小さな離れ家が、数家見え隠れしていた。
馬車は洋館の横、勝手口に着けられた。
同乗していた燕尾服の男性が馬車の扉を開け、降りた。
「さあ、いらっしゃい」
と先に降りた燕尾服の男は、降りやすいように手を差し延べた。
その手をとり、馬車を降りると風が心地よく吹いていた。
育った田舎を思い出す、青々とした草原の香りがした。
「では、ついてきてください」
郷愁に思いを馳せたのも束の間。
目の前には、自分には分不相応な建物に今から入らなければならなかった。
いざ館に入ると、そこは天井がとても高く、見たこともない洋風な行灯がぶら下がっていた。
物珍しい洋物な館の中をきょろきょろと見渡しながら、燕尾服の男の背について行く。
“トントン”と2回扉を燕尾服の男がノックした。
中から扉が開けられた。
自分より二、三歳年上だろうか?
白いシャツに足首が見える丈のズボンを着た少年が、扉を開けてくれた。
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