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第28話
「それで体を拭いてね」
ドアがトントンと叩かれた。
「要です。着物をお持ち致しました」
天沢が返事をする。
「はい、どうぞ」
「仕事が速いね、要君」
要の腕には、天沢が指定した着物一式が用意されていた。
「正式な着物って、着たことはあるかい?」
田舎育ちの未緒は恥ずかしながら答えた。
「いいえ、…ありません」
「じゃあ、着させてあげるね。要君も手伝ってくれるかい?」
「はい。ではこちらが長襦袢です」
「白い肌には深紅の長襦袢が似合うね~」
別の意味でもね。とそれは言葉にはしなかった。始めては相手によっては血が出るからね。
処女には血の色を隠せる赤の長襦袢は鉄則なんだよね。
「う~ん、白の生地も良いね。榊様の見立ても良いけど、要君のセンスが光るね。花柄はピンクの桜を袖下にもってきたんだね。清楚で可憐だね」
「帯は深紅の赤を選び、帯締めに金色をあしらいました」
要も知っていた。着物は白と指定されていたので仕方なく選んだが、帯は深紅色の赤にした。
着物を羽織ながら、夜の営みを楽しむ人種がいる事を知っていた。
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