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第34話
「もしかして未緒ちゃん、階段、初めて?」
ギグッ⁉気がつかれた⁉
未緒は農家の次男坊だった。家には階段など有るはずもない。都会には口減らしに一日滞在した程度で、階段とは無縁だった。
今、未知はほぼ未知との遭遇中なのだ。
「は、初めてに近いです」
田舎者丸出しだ!顔を赤くし下を俯いた。と言うか下を見てないと、この階段とやらから転げ落ちそうで階段から目が離せなかった。
「ここに連れられてきたときは、どうやって階段を上がったの?」
「無我夢中というか、自分でもどうやってあがったのかわかりません」
山を登る感覚で自然と階段を上がったのだろうか。
しかし今は履き慣れない底の高い下駄を履いている。
そして着慣れない丈の長い着物を着ていた。
山を下りるとは大違いだ。
天沢は、抱っこして降りてもいいのだけれど、これからはここの階段を使用することになるだろうし、慣れてもらった方がいいだろうと、一歩ずつ階段を降りる未緒に合わせた。
「ゆっくり降りていいからね」
「はい」
一歩ずつそっと足を進める未緒。
やがて階段を降り終え、本館の裏口に辿り着いた。
裏口には燕尾服を着た男が立っていた。
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