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第36話

店で客を取らせる前に男娼屋は顧客の榊に連絡をした。榊に未緒に合わせると、お試しもせずに男娼屋から未緒を大金で身請けした。未緒を見るなりよだれが垂れそうな口元を気遣いながら、側近に香游楼へ連れて行くよう命じた。 「今日中に仕度を整えるよう香游楼に伝えよ」 「はい、旦那様」 それから数時間後、ある程度の肉棒なら後ろで受けとめられるように広げられたうしろ。 今は湯を浴び火照った体には心地よい秋風があたる。 小川を橋で幾度か越え、辿り着いたのは菖蒲の間と言う離れ家の部屋。 離れ家は基本分譲対応の宿だ。それぞれ宿主が所有する物件である。 その間を抜けて小川の橋を越えて行くと、この離れ宿の端の左右に借家が二件だけ存在していた。 分譲者がパーティー的に借り受けする離れ家が随時二家用意されていた。 その一つが菖蒲の間だった。 顧客の榊がまだ来ていない事はわかってはいたが、燕尾服の男が二回扉をたたく、反応がない。 鍵をドアノブに差し込むと、カチッと音がした。 扉を開ける。まだ榊は来てはいなかった。主人が部屋に着く予定時間より一時間程早く部屋に来たので、それもそのはずである。 扉を開け部屋の中へ入る。 未緒も底の高い下駄を玄関で脱ぎ、燕尾服の男に遅れないよう後を追った 「今から部屋の香り付けとして香に火を入れる。媚薬混じりの香だ。反応しても自分で前も後ろも弄るな」 「はい、わかりました」 そう言うと燕尾服の男は香に火を入れに、部屋の奥にある香立てのもとに向かった。

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