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第2話
クラスでは性別の優劣をなくそうという寛容の授業が行われてはいたが、所詮授業中だけ綺麗な言葉で差別はしないと全員が答える。
だが、授業が終わり教師がいない場所は無法地帯と化してしまう。
男性でも妊娠するということを全員が知っているため、玲也は一気にクラスで最下位の立場に落ちてしまった。最悪なことに同じクラスにΩは誰もおらず、隣の教室で同じΩの友達を作ってなるべく一緒に行動するしかなかった。
唯一勉強だけは出来たため、必死に努力を重ねてαと同じかもしくはトップの成績を残すようにして何とか気持ちだけは負けないようにしていた。気持ちで負けたらおしまいだと子供ながらにそんなことを考えていた高校生活だった。
そのため、良い思い出など何一つなかった。
弱者が悪いというのは強者の言い分だと、重々わかっている。
わかってはいたが、覆すことの出来ない差別に結果を残すことしか出来ないのもまた事実だ。
その結果、今では全国支店を統括する中枢部で仕事が出来ている。会社ではΩであることを申告した上でヒート状態のときにはなるべく抑制剤を飲み、酷いときには休暇を貰えるようにしていた。
βの部下は休んでくださいと再三言ってくるが、薬で抑えて仕事に差し障りがないのならばなるべく仕事に打ち込もうとしていた。
高校生活の中で最下層として見下されていた過去はどうしても拭えず、心配してくれている部下の言葉すら迷惑だから来ないで欲しいと曲解して捉えてしまう。
そんな精神状態で過ごす生活はあまり楽しいと言えたものではない。
そして、高校時代に染み付いた人間不信は今も玲也の中でくすぶっていた。
重度の迫害を受けたことのある玲也のバックボーンから作り出された、ちょっとした自衛手段であったのかもしれないのだけれど、玲也はそれについてはまだ詳しく考えないことにしている。その現状を先延ばしにするタイムリミットは決めていない。
ずるずると引きずって生きている。
同じΩなら心を開くことは出来たが、他の人間は全てが敵と言っても過言ではない状態だ。
だから去年入社してきた新人の指導を任された時にも仕事以外は関わらないようにしようと最初から決めていた。
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