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第13話

 βのように普通の性欲があるのだから抜きたい時に抜いてリラックスをしなければならないのはわかっていた。ただ、仕事で気を張りつめているぶん性欲より睡眠欲のほうが優先されていた。 「その分、椎奈さんに甘えますから」 「あんまり可愛いことを言うと食べたくなるなー」  くすくすと笑いながら玲也のスラックスを脱がしにかかる。腰を浮かしてやれば抜き取られ、生温い潤滑剤を垂らされた。何の準備もしていないアナルのあたりを椎奈の綺麗な男性特有の骨ばった指でほぐされていくのを感じ取りながら、ただ物足りない思いで軽く腰を揺らめかす。 「入れますよ」 「入れてっ」  あまり余裕がなかった。  見栄やプライドなど、この部屋では一切必要ない。そんなものは外界だけで充分だった。  指が、椎奈の細いがしっかりとした指が潤滑剤の力を借りて少しずつアナルに入ってくるのがわかった。中から、くちゅくちゅと卑猥な音が聞こえる。  両脚を顔の横まで折り曲げて片手でアナルを拡げて見せる。 「あいかわらずエッチな孔ですねぇ」 「椎奈さんの指、もっと欲しい」 「いいですよ」 「ぁッ、アあん、んっ」  二本、三本と増えて挿入された質量に満足気に甘い声が自分の口から響く。満ちていく感覚がとても気持ちが良い。  内壁を擦るのも奥を少しずつ拡げていく指の全てが愛おしくてぞくぞくとたまらない性欲が高まっていった。  指が簡単に入るほど、玲也のアナルは弄られ尽くされていた。全て引き抜かれた指からは潤滑剤が泡立ち白濁のように垂れ、ぽっかりと開いたそこは物足りなさで仕方がなかった。 「下のお口、ぱくぱくしてますよ」 「んっ、お願い、何でも良いから、入れて」 「玲也さんにぴったりの持って来てますよ」  呼び方が段々変わっている。  彼はいつもそうだ。こちらの意識が性欲に支配され始めると下の名前で呼び始めるのだ。  この期間だけの恋人ごっこでもとても嬉しいサービスだと思わずにはいられない。  そして、ぴたりと宛がわれたものがぐちゅりと卑猥な音を奏でたと思えば、感じたことのない気持ち良さに椎名の腕を掴んだ。 「あぁッ、なに、や……きもちい」 「アナルビーズですよ。試していないでしょう? これ何個目まで入るのかこの期間で試して、もっと厭らしい体にしてあげますね」 「まって、いまきてる……ヒートきてるからあぁ」 「本当だ。フェロモン出始めましたね。じゃあ、俺は食事でも作るのでそれで遊んでいてください」  二つ目まで飲み込んでいるビーズが後孔でブルブルと震えて振動を伝えていた。  予定通りに始まったヒートは想像よりも強烈で、いつも何をしていたのか思い出せなくなってしまうほどだった。  腰丈まであるカットソーが邪魔に思えて脱ぎ捨てる。そして、寝転んだ格好でまるまってアナルに突き刺されたビーズに触れてみた。黒い丸玉は段々と大きさを増していて、今は小さい物が二つだったので、もう一つ追加して押し込んでみる。ぐにゅ、と飲み込んで内側で気持ちの良い所に小さな玉が当たり、久しぶりに感じる快感に表情が蕩(とろ)けていくのがわかった。  あらかじめほぐしてくれていただけに、容易に飲み込んでいく異物にすっかりおもちゃを与えられた子供みたいに夢中になっていた。  キッチンからは良いにおいがし始めている。  レースのカーテン越しに日差しが降り注ぐ錯綜的な非日常だった。一か月前もそんなことを考えながらヒートを迎えたのをギリギリ覚えている。  角度を変えるだけで先端が思いもよらないところへ当たり、また嬌声があがった。  はひはひと呼吸を繰り返して、それでも物足りないともう一つ押し込んでみるとそれも飲み込んでくれた。次の玉は幼児の拳くらいの大きさがある。 「出来ましたよー。あれ、遊んでって言ったのに全然進んでませんね」 「し……なさ」 「んー?」 「おねが……い、おれの項、噛んで」

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