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第26話

 そうして、ソファの上に敷かれたふかふかのマットに顔を寄せてにおいを嗅ぐと藤巻のにおいが強く残っていて愛おしい気持ちが沸き上がる。 「圭くん、抱き付いていい?」 「お好きにしてください」  夕刻にさしかかろうとしていた時に不意に触れたい衝動に襲われて無防備に背を向けている彼へ問いかければあっさりとした言葉が返ってきた。  遠慮なくその背中へ抱き付いてみるとしっかりと筋肉のついた半身に驚かせられる。意外と着痩せするタイプのようだ。温かな首筋へ唇を寄せてその温もりを堪能する。目を閉じて彼の名を呼んでみると律儀に応えてくれる。 「今は平常だから聞くけど、ヒートの俺は気丈でもないよ」 「それは知っています」 「一般教養で教わるからね」 「今まで辛い思いもしたでしょう」 「……うん」 「大丈夫ですよ。俺は偏見なんてしませんから」 「ありがとう」  暗闇の中に一条の光が差し込んだような気がした。好きとか愛しているなどの上辺だけの台詞は聞き慣れていたはずなのに、彼の発する言葉には素直に嬉しいと思えた。    明け方にヒートは突然訪れた。  いつもはじわりじわりと発情の形跡があるが、今回は普段よりも酷いようだ。衣服を着ているのも煩わしいと、トップスの白シャツはそのままに、部屋着のボトムスを脱ぎ去ってローションで濡らした指を後孔へ飲み込ませる。見苦しい姿を晒している自覚はあった。 ただ、我慢が出来ないのだ。何かを入れていないと落ち着かず、腰だけを高く上げて顔はベッドのシーツにうずめている。  浅ましい。  隣で眠っていた藤巻は気付いているだろうか。  自然と内側から腸液が漏れ出してくる。  ローションなどもう必要ないようだ。完全に雌のように濡れている。 「圭くん……っ」  顔を見ているだけで気持ちが高まって来る。愛しいという感情はまだない。aのにおいだけに感化されている。それでも、恋愛ごっこから恋人になってくれたら良いのにとは思う。頭の中が奥まで突き入れて噛んで欲しい欲求だけに支配され始めた。 「圭くん」  もう一度名前を呼ぶ。  眠っていた彼が身じろぎ、うっすらとその瞳が開けば視線が交差した。 「玲也さん、もしかして始まりました?」 「始まっ、た」  やっと応える。  寝転んで数本の指を差し込んだ体勢から動けない。今抜いてしまうとそれはそれで辛いのだ。 「そのままで良いですよ」  後ろに回った藤巻が何をしようとしているのかわからないが、埋め込んで少しでも快楽を得ようとしていた指をそのままにしていると急にその隙間に捻じ込むように弾力のあるものが入ってきた。 「……っ、なに?」  濡れてざらりとした感覚のあるそれが藤巻の舌だとわかるのに時間はかからなかった。  あの綺麗な顔が自分のアナルに顔を近付けてあまつさえ舌を挿入している。その事実だけで顔がほてってきたのがわかった。  そっと玲也の指を抜き取り、じゅるじゅると舐める彼は何を考えているのだろう。そんな思考とは裏腹に腰が揺れてもっと欲しいと強請(ねだ)っている。  浅ましい。 「どんどん出てきますね」 「お願い、抜かないで……入れてっ」 「挿れてあげますよ」  抜かれた舌にもどかしさがじわじわと上りつめてきたと思ったらひっくり返されて腰から下を持ち上げられ、藤巻の目の前に恥部が丸見えとなった。

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