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第27話
「アっ、あ……気持ち良い」
恥ずかしいとか惨めだとか感じる前にずぷりと一気に挿入された満足感に支配された。
「玲也さん、締め過ぎ。いつもこんな感じなんですか」
「はひ、んひっい、きもひくてわかんない」
どろりとアイスクリームのように熱で溶けた思考でしどろもどろに言葉を紡ぐと、奥までゆるやかに進んでいた藤巻の性器が最奥をこつこつと突いてくるのがわかった。
まだ肉同士がぶつかるのまで余裕がありそうで怖い。どれだけ大きいのか見ていないので全くわからない。椎奈との情交ではそろそろぶつかり合う頃合いなのにと頭の片隅で思う。
「ひうッ! あ、やら……いく、イグぅう」
結腸が拡げられたのがわかり、そこへ藤巻のペニスがぐに、と押し入ってきてあまりの快感にぱちぱちと目の前がスパークして達してしまった。
結合部からはまだ腸液が溢れて、太腿を伝っている。はあはあと肩で胸で呼吸を繰り返し、意識が現実に戻って来るのを待つ。
しばらく時間が経ったのか数分なのかわからないが奥深くで繋がったまま辛抱強く待っていてくれている藤巻が玲也の腕を掴んで抱き寄せた。より深くまで挿ってくるのでまた甲高く甘い声が出た。
「まだ、だめっ」
「大丈夫でしょう? 奥の肉襞が吸い付いてきてますよ。ずっぽりと埋めておいて今更止めないでください」
初めて拓かれる個所に恐怖感よりも気持ち良さのほうが勝り、きゅんと胸の中に溶けた感情に名前が付けられないでいる。
嬉しくて苦しくてどうしようもない。
抱きしめられて、抱きしめ返す。
これがレンアイなのだろうか。
大人になりきってしまった今、どの選択肢が正しいのかわからない。
わからないまま大人と定義付けられ、現在に至っている。
何回と繰り返してきた情交も、こんなに必死に自分の全てをさらけ出しているのも初めての玲也にとって特別な儀式のようでもあった。
確かに拓かれたことのない場所にまで埋め込まれた今、満足していた。少し腹筋に力を込めてみれば端正な顔が歪められ我慢しているのが見受けられる。
相手の首に両腕を回してゆるりと近付けてみれば、あっけなく傍に寄ってくれた顔の唇に触れるだけの口付けを落とした。すると深い口付けを施されて困惑する。
舌同士を絡める濃厚な接吻の後に苦笑を残されてどきりとした。
好きでいて欲しい。
髪を撫でる掌すらも愛おしくてたまらない。
朝日はとっくに昇っているというのにぐずぐずと燻(くすぶ)り合っている我々はどこに行くのだろう。
ゆっくりと動き始められた律動に喉の奥から単語にもならない喘ぎが漏れる。
「け……ッあ、く……ンん」
「玲也さん」
「ぁア! あっ……ンん」
「好きすぎて、どうにかなりそう」
「ひうッ」
がくがくと揺さぶられる律動に名前さえ呼べなかったが、熱い体液が奥に出されたのだけはしっかりとわかり思わず涙声が出た。中に出されてしまった。今まで中出しだけはされたことがなかったのでどう対処したらわからない。Ωは男性でも妊娠するというのは知識として知っていたが、本当だろうか。
「出してしまってすみません」
「あ、や……抜かないで」
「掻き出さないと」
無情に抜かれた孔が物欲しげにひくついていた。そこに数本入れられた指で搔き出されるのすら気持ちが良い。すっかり蕩けた顔で藤巻を見つめると、抱きしめられた。
「圭くん、お願い……噛んで」
「本当に俺と番になって良いんですか?」
「圭くんが良い」
幾度となく誰かに告げた台詞を繰り返す。
いつだって番になりたかった。誰かの特別になりたいと願っていたのだ。
首の裏側に唇が触れ、次の瞬間に味わったことのない鋭い痛みが項(うなじ)に落とされた。これで彼だけのものになれた。ずっと求めていた願望が叶い、自分でもわかる程ぶわりと甘い香りが溢れ出て来たのが感じ取れた。
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