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第38話

 今まで朝礼の席で付き合っていると報告した例はあるのだろうか。aとΩは特別視されるため、報告した方が良いのはわかっている。  そんな心配をしている内に玲也が戻って来た。 「話して良いって」  あっさりと悩みは吹き飛んだ。 「良かった」 「うん」  いつも何となく参加してじゃあ、今日も頑張りましょうで締められる朝礼が今日はやけに長く感じる。  進行役の上部が二人の名前を呼んだのを機に我に返った。周囲は何事かと視線を二人に送っている。  もちろん彼女の視線も感じた。  上部たちが立つ方へ歩くと微かに緊張した。玲也の方を向くと、彼も不安そうな表情を浮かべている。ぎこちない微笑みを口元にたたえて、大丈夫だと自分に言い聞かせる。  ただ、伝えるだけだ。 「俺と時津さんは番になりました。皆さんも時津さんがΩなのは知っていると思いますが、手を出さないでくださいね」 「藤巻さんと番になりました。仕事はこれまで通り続けていきますので、よろしくお願いします」   考えていた台詞を取り敢えず言い切った。 「時津さん、藤巻さん、おめでとうございます」  佐上が拍手で迎えてくれた。 「おめでとう」 「おめでとう」  周囲もぱちぱちと拍手をしてくれた。  その中でガタン、と乱暴に椅子と机がぶつかる大きな音がしたかと思うと、誰かが走り去って行った。同僚に囲まれている今追いかけることは出来ないが、多分あの後ろ姿は姫宮だ。  後でフォローを入れておくかと考える。  例え一方通行であろうと自分を慕ってくれたことには違いなく、いきなりの発表に動揺しているだけだろう。  

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