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第15話
鋭い痛みで目が覚めた。
「…ここ…っぅ!!」
背中にはまだ刺さるような痛みがあって、ぎゅっと小さく縮こまる
痛みに耐えながらうっすらと目を開けると、そこはコンクリートでできた場所で、ドア一枚分くらいの鉄格子が嵌められている。
まるでテレビで見たような刑務所のような部屋だった。
簡易的なトイレが仕切りもなく部屋の隅に設置されていて、そこからなのか部屋は異臭がし顔をしかめる
どうやら、あそこから移動させられたのかな。
移動というより放置に近い感じだけど
それよりあれから何時間くらい経ったのか、
日が見えなくて全くわからない。
「うっくぅ いっったぁ」
「いたい、いたいのとんでけ」
痛みに悶えていると優しく自分の頭が撫でられ、反射的に顔だけをあげると自分よりも小さな、目のクリっとした少年が自分の頭を撫でていた。
「いたいのとんだ?」
大きな目が僕の顔を覗き込んでいる、僕は驚いた。
全く痛そうな素振りが見えないからだ、およそ5,6才の子があの痛みを我慢できるとは思えない。
「君は?」
「僕、ヒナ。そう言えって、でも本当はアキって言うんだ。」
「じゃなくて痛くないの?」
すると少年は何の事かわからないのか首を傾げる。
もしかしたら焼き印をされていないのかな。
「目はあの人にやられたの?痛くない?」
少年は凄く可愛い顔をしている筈なのに、痣だらけだった。
特に左目には大きな青あざができていた。
少年は自分の左目に手を当てまた首を縦にふった。
「これはおかあさんとかおとうさんにぶたれたんだ、でも、僕が悪い子だから仕方ないの。
ここにいるのもきっと、僕の事が嫌になったから。」
「違うよ」
ぐっと痛みに耐えながら体を起こす。
「…君は悪い子じゃない。おいで」
あぐらをかいて膝をぽんと叩く、少年は首をかしげたが暫くして僕の横にすとんと腰をおろした。
「横になってお兄ちゃんの足に頭を乗せて」
やっと彼は理解ができたようで、すっと小さな頭が膝に乗った。
「ここにいるのは君のせいじゃない、…誰のせいとか考えちゃダメだよ。
辛いから…それより、ヒナ君は凄く髪の毛が柔らかいね。
撫で撫でしやすい。撫で撫では良いこの証なんだよ」
「そうなの?ママはいつもぶつから僕は悪いって、いらないって」
「それじゃあ、僕がお兄ちゃんになるよ。
僕はヒナくんが悪い子じゃないってわかるよ。
だって、人の心配ができるんだから。
中々出来ることじゃないって、僕のおかあさんが言ってたんだ。
だから、ヒナ君は悪い子じゃない。」
何となくこの子の前ではお兄ちゃんでいようと思った。
傷の痛みは体に力をいれたくない程で、一人だったらきっと泣き叫んでいた、けどヒナ君の存在は僕をまたお兄ちゃんにしてくれた。
お兄ちゃんは下の子を守らないといけない、弱い事は言っちゃ駄目だ
そうやってここで生きる理由を作った。
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