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第16話
牢屋にはもう一人少年が横たわっていた。
頭に痛々しく包帯を巻いたその子は、あの青年に発砲を受けた子だった。
「…うっ…ここっ…はっ…あいつっは!っ」
目が覚めると飛び上がるように起きたが、同時に激しい痛みに悶えた。
包帯が巻かれた箇所からは、赤く血が滲んできて痛々しかった
「まだ動いちゃ、耳が」
彼はわなわなと肩を震わし拳を地面に叩きつける
「……くそっくそぉ!」
彼は僕の言葉が聞こえていないのかひたすら
地面を叩き、溢れた涙がコンクリートに染みていく。
「痛いの?痛いのいたいの飛んで」
そう伸ばしていったヒナ君の腕を掴んで首を振る、きっと彼に慰めなんて効かない。
僕はその目には絶えることが無い怒りを湛えていたように思えたから、ぐっと息を飲み僕は思った事を口にした
「…いき…生きるしか…無い気がします。死んだら…君を生かした親が」
「うるせぇ!それは俺のせいで親が死んだってことじゃねぇかよ!」
「っ…」
僕は何も返せなかった、僕に彼の苦しみはわからない。
少なくとも目の前で親を殺されたなんて、僕よりよっぽど苦しい筈だ、悲しい筈だ
そしてそれが自分に原因があったとしたらなんて考えると僕だったらただただ啼いていたかもしれない、後悔しか残らないかもしれない。
でもそれを真に理解することなんてやっぱりできなかった。
「碌なことしてこなかった…最後に交わした言葉だって…なのに俺は彼奴に復讐だって」
「やっと起きましたか」
彼の慟哭混じりの言葉を遮るように、後ろから声がして振り向くと、先ほどの執事が鉄格子の向こうで立っている。
執事は僕達に目を合わせることなく、じゃらじゃらと鍵のついた輪っかを取り出す。
「今からここを開けますが、くれぐれも逃げようなどと考えないでください首もとの爆弾が爆発しますよ」
そう言われて気が付いた、僕達の首には銀色の首輪のようなものがついていた。
重さはそこまで無かったが小さくオレンジ色のランプが点滅している。
「それはあなた方を監視する装置の一つです。では付いてきなさい」
それだけ言って僕達は牢から出された。
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