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第21話

それから更に悪夢のような日々が続いた その間にも数人の死体が増え、数十名いた少年たちは十の指で数えられるほどにまで減っていた けど今回の呼び出しはいつもと違って目隠しをされていつもと違う部屋に連れてこられた。 目隠しを外されるとそこは白く滑らかな床にヒビが入った灰色の壁、そこに少しの彩が加えられた小さな窓がはめ込んである部屋だった。 「暫く待っていなさい」 と神崎が出ていくと僕は真っ先に小さな窓に向かった。外を見れるかと思ったからだ 「わぁ…」 そこから覗いた景色はとても色鮮やかな花々が咲き乱れていた。 とてもこんな世界から隔離されたような場所には似合わない、けどとても綺麗だった。 側に居たヒナ君を抱えて同じ景色を見せると目をぱっと見開いて少しだけ喜んでいた。 「でも、お外は見えないねぇ」 そう、外を見れると思っていたけど花が咲いていたのはこの部屋と同じような白の空間だった、無論外の状況は見れなかった。 「残念だね…ホムラ君もっ」 ホムラ君はそんな外の景色には目もくれず、入ってきた扉の方をじっと睨みつけていた。 その視線を読み取って僕も現実に戻った、得体のしれない恐怖に呑み込まれたくなくて窓の外の景色に夢のように浸っていたかっただけだから 暫くの沈黙を破るように僕達が入ってきた扉から、初日に出会ったあの青年が現れた。 「やあ、久しぶりだね…っても時間の感覚は無いか」 それなりに広い空間に青年の凛とした声が響く、彼の無邪気そうなもの言いには何故か体が強張ってしまう。 「…そういえば、名前言ってなかったような気がする。ご主人の名前を知らない奴隷なんかいないもんね、僕の名前は赤羽 才加(あかばねさやか)才加様って呼ぶんだよ。」 「はい」 僕達が返事をすると満足そうに目を細め、うんうんと頷く素振りを見せる。 「じゃ、今日はここでゆっくり休んでもらってかまわない。好きに過ごしていいよ、勿論他の子もね」 才加が指を鳴らせば扉が開き、少年達が入ってきた。 彼らも初めて見るこの部屋に戸惑いながら、身を縮めてきょろきょろしていた全員が座ると才加はまた話し始める。 とても慈悲深そうな顔を作り、胸に手をあててまずは謝罪だと頭を深々とさげた。 「ここでは自由に過ごしてもらって構わない、散々苦しめて締まったからね。 耐え抜いた君達にはそれ相応の褒美をあげないと…暖かい布団と毛布と、ついでにお腹に優しい食べ物を用意したから、たんと食べてね」 彼がそういうと、またまた扉から大きな鍋が乗った台を押す大人たちと毛布やら絵本やらが運び込まれてきた。 少年たちは久しぶりの食べ物の匂いにわかりやすぐ反応し、大きな鍋を取り囲んだ。 しかし、突如こんなことをする彼の真理がわからず、僕たちは顔を見合わせた。 そんな様子を見て彼はすかさず言葉を挟む。 「戸惑うのも無理は無いよね、けど安心して食べて欲しいこれで君達のお仕事は終了だ」 その言葉に戸惑いつつも鼻孔をくすぐる匂いには勝てず大人たちが注ぐお粥を受取っていく。 その様子を見ていても僕はその集団には混ざれないでいた。 どうしても何かが引っかかるのだ、ホムラ君もそれは同じで耳打ちしてくる。 「なぁ、なんか奇妙じゃないか」 「…うん、ぼくもそう思う」 こそこそ話し合っていると、ぬっと大きな影が近づいてくるのに気がつかなかった。 「お前たちも食いなさい」 だから、その声にびっくりして声がした方を見れば神崎が僕達3人分のお皿を持って立っていた。 お皿には粥が皿いっぱいに入っていて、思わず喉がごくりと鳴る 「警戒するのはわかりますがこれは才加様からの命令だ、食いなさい」 ‥‥僕達は観念してお皿を受取った、それでも中々口を付けない僕達をじっと見つめる神崎を前に、ここで食べないとずっとこのままだと確信し口に運んで驚いた。 今日までのご飯は味気のないものだったけど、舌に流れ込んできた暖かく出汁が効いた卵粥は絶品で、あっという間にお腹の中に収まってしまった。 「ごちそうさまでした」 お粥に夢中でごちそうさまをした時には神崎の姿は無かった。 そして鍋の中のお粥はあっという間に平らげられ、それを見届けると才加と執事の神崎たちは部屋から出ていった。

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