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第22話
視彼らが出ていってから少年たちは穏やかに過ごしていた。
布団に包まるもの、絵本を手に取るもの雑談をするもの、ここに来てから初めて和やかな空気には僕達はすっかりはまってしまった
「始めは、何を企んでいるんだろうって思っていたけどなんてことは無かったね」
そんな会話も聞こえてくる。
まさにその通りで拍子抜けとはこのことだというくらい何も無かった。
「おにいちゃん、お花綺麗だねぇ」
ヒナ君は窓越しに見える花が大変気に入ったらしくさっきからずっと窓に張り付いている。
「そうだね」
ヒナ君の柔らかな髪に指を通しながら一緒に眺める。
「ねぇこのお花なんて名前?」
「うーんとねぇ、確かヒガ…」
その花の名前を口に出しかけて途端に違和感が再び蘇る。
悪寒が背中から這い上がってきて、窓に張り付く
そこに目に焼き付くような真っ赤な色で空に向って咲き乱れているのは「彼岸花」だ
父の墓地の付近にもこの花は咲いていた。確か別名は死人花や地獄花と母が言っていた気がする。
周りを振り返ると少年たちの無邪気な表情が目に映る
そして、神崎が言っていた言葉を思い出した
『一時の幸せを知るより、ずっと苦しんでいる方が良いんです」
そして才加のあの言葉『今日で君達の仕事は終わりだ』
じゃあ今日は…最終日だ
彼らは明日売りに出される、けど彼らはきっと知らない…一瞬伝えるべきかと悩んだけどそれは僕が伝えるべきじゃない。
伝えても逃げ場などないのだから、混乱を招くだけで利益は無い。
「おにいちゃん?」
「えっ。あぁこれはねヒガンバナって言うんだよ」
でも、なんで僕達も一緒に閉じ込められたんだろう。
それにこんなに沢山のヒガンバナを部屋の外に敷き詰めているのは正直不気味だ、というか気のせいなのかなだんだん部屋が暑くなっている気がする。
じとりと汗が伝ってきた額を拭う、周りを見渡すが周りはそんな素振りは見えない
僕の異変に気が付いたホムラ君が僕の顔をみてぎょっと驚いた
「おい、大丈夫か?」
肩を揺さぶられるがまま、ホムラ君にもたれかかる
ぐにゃりと歪む視界、手の震えが止まらず体に力が入っていかない。
視界が暗くなってくる、意識を保っていられない
「なん…で」
疑問を口にする前に僕の意識は水に沈んでいく
……そこからどれくらいの時間がかかったのかはわからないけど海の底から浮かび上がるように意識が覚めた、けど目は開けたはずなのに視界は暗いままですぐに目隠しをされているのがわかった。
「さあ、さあ今宵もやってまいりました。皆様のお眼鏡に適う奴隷はおりますでしょうかねぇ!!まずは本日売りに出される商品をご紹介いたします!」
その声と共に視界が明るくなると、眩しすぎる照明の向こう側に多くの大人たちの姿が浮かび上がる
「…えっ?」
多くの売りに出される子供たちと同じ舞台に僕は居た
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