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第24話

引っ張られるままに連れてこられた後、一人一人が小さな檻に入れられた。 僕以外を除いて皆、意思のない人形のようで檻に閉じ込められても慌てる様子も恐怖に怯える様子も無い。 そう言えばホムラ君とヒナ君はどこにいるんだろう。 彼等もここに連れてこられてるんだろうか? そしたら、ヒナ君は泣いていないかな、ホムラ君は暴力を振るわれていないかな。 「なんでこんなことになったんだろう」 父が亡くなって借金が見つかって、訳もわからず連れ去られて…今までの事を思い出してとても疲れた。 辛い、逃げたい、死にたくないあんな目に合いたくないのに逃げる術が無い、生きていく方法がわからない。 誰か助けて、僕を助けてよ 次々に溢れでてくる涙で汚いワンピースが濡れていく、声は漏れでないよう唇を噛む、ビリっと痛みが走ったけどそんなことなんかどうでも良かった ただ、この現状から助かりたい助けてと何度も何度も願う、そんな存在がいるなんて期待していないけど願うくらい許してほしい 「ねぇ泣いているの?」 頭から降ってきた声に反射的に頭を上げた、視線の先には金糸のような美しい髪を腰のあたりまで伸ばし、白いワンピースを着た少女が立っていた。 「誰、ですか?」 女の子は深いブルーの目をキラキラとさせて、この場に似つかわしくない笑みを浮かべたのだ 「私はねヒール、あなたは?」 「僕は、ハル…ほんとの名前は違うけど」 「そう、でも気を落としちゃだめよ。名前を与えられるだけマシなんだから 私もね本当の名前は違うの、けどもう忘れちゃった」 「悲しくないの?」 「どうして?名を与えられただけで喜ばしいことなのよ。それより私の事どう思う?」 「…どうって」 「見た目よ、見た目」 「綺麗だね、って言えばいいのかな」 正直他人を褒めている場合じゃないけど、少女は僕の言葉に大層気を良くしてぱっと表情が明るくなる。それが結果、今の状況を少しだけ和ませてくれた 「ふふ、そうよね!私まだ綺麗よね。良かったわ あのね、飼いビトと言っても悪いコトばかりじゃないのよ このお洋服だって気に入られている証拠だし、ご飯も冷たいけれど食べれるの。 他の子じゃこうはいかないわ、汚らしい部屋で過ごさなければいけないし、いつ死ぬかもわからない、つまり私は特別、今檻の中にいるあなたなんかよりもずっとね」 そう言って彼女は安堵したように胸を撫でおろす 「君はなんで僕にそんなことを聞くの?」 彼女の表情が一瞬曇った、何が引っかかったのかわからないけど彼女は直ぐに笑顔にもどってなんでもないと言った 「それよりね、私あなたの事気に入ったわ 今の子はみーんな言葉を忘れてしまったから」 そう言いながらレースが施された手袋に包まれた白い手を檻の中に伸ばしてきて、僕の頬に触れた。 そして、涙に濡れた目元を優しく拭う 「ヒール何をしているんだ」 その時彼女を呼んだのは、観客席にいた人たちと同じように仮面をした男だった。 彼女は肩をびくっと震わし、強張った表情になる 「彰人様」 「商品に勝手に触れるな、服が汚れるだろう」 「申し訳ございません。」 「まぁ良いそいつはなんだ」 「一人様子がおかしいのがいたから気になっただけですわ、久しぶりにまともに会話できるお人形さんに会ったので驚いていました。」 その言葉で彼女も僕をモノにしか扱っていない事が良くわかった。 少しはまともな人に会えた気がしたのに、でもそう思わなきゃやっていけないんだろうな。 「そうか、おいお前」 「なんですか」 男はふんと鼻で笑うと膝を折ってしゃがんだ、目線が同じになるとまじまじと僕の顔を覗いて面白いオモチャを見つけた目をした 「なぁお前全く理解が出来てないって顔だな、売りに出されたんだ」 「…それは知っています」 「だが薬が切れるとはついていないな、何で薬が投与されると思う?」 やっぱり、あの時の体の違和感は薬だったのか。 「…逃げ出さない為でしょうか」 「いや、子供の一人や二人逃げ出したところで抑えられない程緩いセキュリティじゃないさ、ま見ていればわかるさ、でお前さここから逃げたくないか?」 「えっ?」 「助けて欲しいんだろ?」 男はポケットから鍵を取り出して見せてきた、いきなり過ぎて話しについていけない。 しかし舞い込んできたチャンスかもしれない 答えないうちに檻が開け放たれ僕はそっと檻の外に出た その様子を周りにいた男たちは見ていたが何も言わない。 多分彼は特別な客なんだ、実際彼以外にここに出入りしているものは見当たらなかった。 この男に付いていくのも信用は出来ないけど、逃げたら檻に閉じ込められるだけじゃ終わらない気がする。 本当に一人商品が逃げたところで構わないのだ。 だから厳重に管理しているようでもこうやって外に出されても見向きもしない 逃げ出さない僕を見て頷く男、その後ろから先ほどのピエロマスクの男が声をかけてきた 「彰人様、出番ですよ」

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