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第31話

車には目隠しをして乗せられた。 二度目となるとハルは騒ぐ事も無く大人しく従った 車に揺られながら数分後には体の疲労と目隠しによる光の遮断で緊張より睡魔が勝ったのか静かに寝息をたてて眠ってしまった。 静かに車に揺られながら才加様は、自分にもたれかかるハルを叱ることもせずそっとしておく その様子をバックミラー越しに見ていた神崎は口を開いた 「その者をどうするおつもりで?」 「僕の勝手だろう」 その問に答える筈も無い彼の様子に内心呆れながらも、少しばかり嬉しいような気持ちになる。 普通、カイビトと同乗する事は疎か自分に無断で触れさせる事はしない。 彼の中でハルが特別な事は今までの様子からも明白だ、これが良い方に転べばいいのだが…まだ不安は拭いきれないな 神崎は優しい面持ちで主人に語りかける。 「本日もお疲れ様でした、帰ったら温かいココアでも用意致しましょう。」 「あぁ」 素っ気ないやり取りが終わり、また車内は静かになる 才加様もまた疲れたのだろう数分後に再びバックミラーを覗くと窓にもたれながら静かに寝ていた その様子からは非人道な行いをしている人物には見えない。 この家に生まれなければまた違う人生を歩めた筈の青年を自分は守らなければならない。 それが神崎秀明という人間の使命だ 毒を食らわば皿までか、と神崎は己の心を引き締めるようにハンドルを握りしめ直した。

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