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第32話
落ちるように眠ってから次に目を覚ましたのはベッドの上だった。
少年達の面倒を見た場所と同じで、だだっ広い空間にいくつもベッドがある中ぽつんと僕とその隣にヒールが寝かされていた。
彼の腕には管が通されていて点滴につながっていた。
引きずられ、嬲られた体には手形の痣や擦り傷でいっぱいだった。
その姿が痛々しくてベッドから離れヒールの傍に近づき手を握った
彼を守ってあげたい。
けど子供の僕はあまりに無力だと知らしめられた
神様、どうしたら良いんでしょうか?
もしいるなら助けてください
けど、そんなのは空想だ
神様なんていたら、僕たちはこんな目に合っていないんだから…本当にどうしよう
あの人に好かれるようにする?
それこそどんなことをしたら良いんだろう、それにヒナや、ホムラ君達は無事なんだろうか?
それとも…あまり考えたくないことばかり浮かんで気分が沈んでいってしまう
ため息をつていると後ろのスライドドアが開いた
「逃げる算段でもつきました?」
背筋が伸びるような静かな声に肩がびくついた
「…いえ、そのようなことは考えていないです」
「そうですか」
神崎さんは無表情で畳まれた服を手渡してきた
もし僕がそんなことを考えていたとして、この人たちには微々たるものだろうに
「今から浴槽に案内しますので、ついてきなさい」
「…はい」
まだ、静かに寝息をたてているヒールを横目に僕は従うしかない。
屋敷内は相変わらず外の風景が見えない造りので蝋燭の明かりを頼りにするしかない。
正直、この屋敷は階段や廊下が入り組んでいて迷路みたいになっているのでよくわからない
おそらく地下を主に活用しているんだろう
そんな道中の中で神崎さんが突如こんなことを聞いてきた
「あなたは私たちを憎んでいますか」
「え…?……」
なんと答えたら正解だろうか…この人たちが僕たちをこんな目に合わせているのは確かだ
けどあの場所でどんな形であれ助けてもらったことには変わりない。
そこは感謝さえしている…けど、やっぱり幸せを奪われたことに怒りはある
「よく…わからないです・・・けど逃げようとは考えてないです」
憎んだって仕方がないと思ってしまえばそうだけど…僕はそこまで割り切れるような人じゃない
今しっかりと答えられることはそれしかなかった
「難しい質問でしたね、今のは忘れなさい。
ほら着きました、ここでゆっくり疲れを癒しなさい。それと終わりましたら先ほど渡した召し物を身に着けて待機を、後程迎えにまいりますので」
「あの、ありがとうございます」
神崎さんは黙って出ていった
本当にここまでの案内だけだったようだ。
それにしてもさっき渡された布…手触りはいいけど、うっすら向こう側が透けている。
丈も短くてワンピースみたいだし、男子が着るようなものじゃないよな
まあ従うしかないので、僕は大人しく大浴場に浸かった
久しぶりのお風呂はあまり気の休まるものじゃなかったけど体の不快感が取れるだけマシだった。
丁寧に体を洗い、言いつけ通りに渡された服を身にまとい座っていると暫くして神崎さんが迎えに来た。
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