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第15話

部屋の外に出ると廊下はしんっと静まりかえっており、先程の事が嘘のように館内の微かな空調の音しかしない。 ここがラブホ内だとは信じられないほどだった。 俺はエレベーターに乗り、ロビーにむかう。 人に鉢合わせする事もなく部屋を選ぶパネルの前でぼんやり部屋の写真を見ていると、腰に何かが巻き付いた。 すぐに木下の手だと分かったので、俺は相手の手の甲の皮膚を摘まみあげてつねる。 「ひどいなぁ」 「まだ触っていいなんて一言も言ってませんけど?」 「それにしても、君がこんな場末の安宿を指定してくるなんて珍しいね」 「ちょっと用事があったもので…」 俺がどうでも良さそうに返事をすると、何かに火が着いたのかこの安ホテルでも一番高い部屋のボタンを押して俺の手を掴む。 そのまま手を引かれてエレベーターに乗り込み一番上の階を押したのを見届けたところでぎゅっと抱き締められる。 俺は直ぐに木下の胸に手を置くとぐっと後ろに押しやった。 「さっきから何ですか?許可取ってくれます?」 「料金は上乗せするよ」 「分かりました。なら料金分はサービスします」 エレベーターが到着した音がすると扉が空くので、俺は木下に腕を絡めてやる。 今日は恋人の様に接するのが正解かもしれないなと直感だがぼんやりと思う。 目的階に着いてエレベーターの扉が開くと、目的の部屋の番号の上にライトがついておりそれがピカピカと点滅している。 「ちょっ!」 部屋に入り、扉が閉まるか閉まらないかのところで抱き寄せられ無理矢理ディープキスされた。 仕方がないので入れてきた舌を軽く噛んでやり挑発して、脳内では帳簿にディープキスの料金も上乗せする。 尻を両手で掴まれたのも勘定しておく。 木下とのプレイでは決まった料金はない。 院長は元々言い値をくれるが、木下は課金システムだ。 「嫉妬ですか?」 「詮索してはいけないのは分かってるが、こんな安宿に何の用事があったんだい?」 「この近くに用事があっただけなので、このホテルには何の用事もないですよ。院長と私を共有してる癖に、そんな些細な事で嫉妬するんですか?」 「ははは。呆れたかな?私だって嫉妬くらいするし、如月先生はちょっと違うんだよ」 俺は茶化す様に言うと、珍しく木下が俺をぎゅっと抱き締めた。 いつもは院長と同じくいじめられるのが好きなのに、今日はいつもと少し違う。 こんな時はよしよしと頭を撫でてやる。 何かあったのだろうが、詮索をし合わないと決めているので特に聞きもしない。 そう言えば連絡をするなと言っていたのに自慢をしあっていたら俺に電話をしてきたのだから俺もそのせいで不発に終わったので今日は金を含めて最大限に搾り取ってやろうと算段をする。 「では、今日はどうします?」 「選ばせてくれるのかい?」 「何かお悩みの様なので仕方がないですね。私もパトロンが居なくなるのは痛手ですし」 「ははは。それはいい!それでは中へどうぞ“ご主人様”」 「あなたのご主人様になった記憶はありませんけどね」 やっと靴を脱いで部屋に入ると先程航と満の使っていた部屋と間取りなどは変わらなかったが、部屋の中から見えるバスルームは大きな湯船が見える。 ベッドも大きく、部屋も広かった。 多分満はわざと安宿でも安い部屋を利用しているのだろうなと自分の居る部屋の設備を見て思う。 テレビの下にはカラオケがあるし、机の上のポップには映画見放題の文字が踊っている。 常々ラブホテルでカラオケをやるなり、映画を見る事なんてあるのかと思う。 「やはり、若いと肌にハリがあるね」 「人の身体洗いながらの感想がそれですか」 一緒に風呂に入るというので、素直に了承すると俺の身体を洗いたいと申し出られた。 断る理由も無かったので許可すると、まるで壊れ物にでも触れる様に俺の身体を洗うがちょこちょこいたずらを仕掛けようとしているが俺が許可を出していないので我慢をしている様だ。 脇腹をボディソープがついた手で撫で、そのまま上にあがってくる。 乳首をあえて避ける様に胸を手で洗われるが俺は無視した。 背骨にそって臀部にも手がのびてくる。 「したいですか?」 尻の表面だけを名残惜しげに撫でてくるので、俺は振り返って不敵に笑ってみせる。 そんな俺に木下は首を縦にふるので俺は泡を流して木下の下半身へ手を伸ばした。 ボディソープは長時間粘膜につくのは良くないので水に溶かすタイプのローションのボトルをバスルームに持ってきていた。 洗面器を軽く濯いでボトルを傾け、粉を洗面器のお湯に溶かす。 しばらくぐるぐると手で水をかき混ぜているとトロリと粘度が出てくる。 「相変わらず我慢ができませんね」 「うっ…」 ぬるついた手を木下の太股で拭い、半勃ちのペニスにシリコンでできたコックリングをとりつけてやる。 その間抜けさに俺は思わず声を出して笑ってしまった。 多分木下が自ら買ってきたのだろう。 パッケージはよく見ていなかったが、竿と睾丸まで通すとペニスが刀の様になった。 後でパッケージをじっくり見ようと心で決めるが、少し分厚めのシリコンには刀の鍔の様な模様が入っている。 あまりの滑稽さに木下のペニスの先に指を掛けて下に押して話すと反動で跳ねた。 面白くて何度も同じことを繰り返すと、どんどんとペニスが赤黒くなっていく。 それがまた面白くてははははと笑い声が出る。 「あーあ。間抜けですね。ケーキの時も思いましたけど、これもどんな顔して買ったんですか?」 「う゛っ」 「ついつい楽しくてローション使うの忘れてましたよ。括れ擦られると気持ちいいけど、これのせいで勃起できないから辛いですよねぇ?」 手で輪を作りその輪で木下のペニスを捉える。 手を左右に捻る様に揺らすと木下のペニスがどんどん熱くなる。 しかし、根本のコックリングのせいで勃起はしない。 俺はそれが面白くて仕方がないのでペニスにローションを足していく。 ぐちゅぐちゅという音が浴室に木霊しているが、それよりも木下の汚い喘ぎ声にもならない短い息がだんだん大きくなっている。 「さっ、洗面器のローションは全部使いきりましたよ?どうしたいです?取って欲しい?それとも挿入したい?」 「う゛ぅ…どっち…も…」 「欲張りですね。じゃあ、これでどうです?」 「そ…れより」 「えー?不満ですか?なら帰ろうかなぁ?」 俺は木下の前に指を2本かざす。 指1本10万円を意味しているので俺は木下に20万を提案してみたが、返事が芳しくない。 焦れているからなのは分かっていたが、俺はすっと真顔を心がけ立ち上がり浴室を後にしようと木下に背を向けた。 しかし、案の定俺の手を掴んだ木下によって足止めされる。 「いくらでも…いくらでも出すから!」 「本当ですね?言質取りましたからね?本当にいくらでも出してくれるんですね?」 「約束ですからね?」 言質も取れた事なので、身体の水分を拭うのもそこそこにベッドに2人で雪崩れ込む。 俺に触らない様に手を頭の上で組ませて寝転ばせる。 そんな木下の大きくなっているペニスを口に含んで口をすぼめてやるとまたしても汚い喘ぎ声にもならない声があがった。 わざと口からじゅぽじゅぽという下品な音を立てて舐めてやる。 十分な硬度があるはずだが、根元の滑稽なコックリングのせいで勃起もままならないし何度見ても面白い。 「あなたほどの名医もペニスをいたぶられればただのしがないドMに成り下がるんですよね」 「とっ…」 「もう少し遊びたいのは山々ですが、私も先日から欲求不満なんですよ」 頭の上で組ませている手に力が入っているのが分かる。 ベッドから一旦降りて、木下の鞄を漁るとガムテープの様な見た目のテープのロールが出てくる。 それをベッドに戻って木下の手に巻き付けてやるとこれで俺には触れなくなった。 その状態でやっとコックリングを外してやると、期待に満ちた顔をしたので平手でペニスを叩いてやる。 ペチンと間抜けな音の後に木下の腹が白く汚れた。 「早漏とは救いようがありませんが、早く勃起させてくれませんか?私も気持ちよくなりたいので」 「ま、まって!」 「待ちませんよ。ほら、私を気持ちよくしてください」 萎えてしまった木下のペニスにコンドームをとりつけ、木下の腹の上に股がる。 木下の事などお構いなしに手を添えて木下のペニスを胎内へ迎え入れた。 俺に待てと言うが、お願いなんて聞いてやるつもりもないので気にせず腰を動かすと木下もなんやかんや言ってヘコヘコと腰を動かし始める。 肌同士がぶつかるバスンバスンという音が大きくなる頃には木下のペニスはすっかり復活していた。 「ほら。まだ私は満足してませんよ?肉のディルドー代わりになるように頑張って勃起させててくださいよ」 「まっ、まってくれ!今、イッたばか…」 「そのっ、台詞はっ!あなた以外から聞きたいですねっ」 木下が絶頂しても俺は気にせず腰を動かして自分も絶頂する。 俺が絶頂の余韻に浸っていると、木下が体勢を変えて俺を組み敷く形になった。 手は相変わらず頭の上で組ませるので俺の身体を押さえ込めず木下がもどかしそうな表情をしている。 しかし、俺は気にせず横向きの体勢で腹に力を入れた。 「コンドーム1箱使っちゃいましたね」 「も、もうでな…」 「えー?中に出したくないんですか?1回5万で中出しさせてあげますよ?」 使ったコンドームは新しくする度に木下の顔に投げつけてやり、自分の精液で汚れた顔で俺を抱いていたが5個入りのコンドームの箱を使いきってしまった。 流石の木下でも苦しそうにしている。 しかし、俺は腰を高くあげて孔の縁に指を掛けて左右に開く。 腸が期待している様にきゅぽきゅぽと不思議な音を立てている。 それを見た木下がごくんと生唾を飲んだ音が聞こえて俺はニヤリと笑う。 結果的には木下に2回も中出しされて、俺もはぁはぁと息があがる。 「搾り取られたよ…」 「こっちも、こっちもですね。ありがとうございます!」 木下に腕枕されながら下腹部を撫でた後に、指を丸めて見せた。 俺的には気持ちよくもなれて、金も貰えて最高だが誰でもいいわけではない。 金も地位もある人でないと俺の夢は叶えられない。 夢へ少しづつ近付いてきて俺は満足げに息を吐くのだった。

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