32 / 35

番外編 ファンタジーの世界

気が付くと俺は鬱蒼とした森の中に居た。 確かカイと一緒に如月の親戚が買収したリゾートホテルに来て、カイとプールで遊んだり航のプレイを見せられたりと色々した後にもう一度プールに行って珍しく健全にカイと寝たはずだったのに。 身動きを取ろうにも全くと言っていい程に体は動かない。 縛られてるとかそんな痛みも無いのでこれまた意味が分からなかった。 しかも声を出そうにも声も出ない。 ~~! 何やら声みたいなものが聞こえる。 そちらを向こうにもやはり体は動かないので気のせいかと思ったが、ふわりと体が浮き上がった気がした。 地面が遠く見え、景色が変わっていくので何かに運ばれているらしい。 リーンリーンと鈴を鳴らす様な音が聞こえてくる。 暫くすると水辺に来たのか高度が下がっていく。 水面には不思議なシルエットが映っているのが見える。 ~~♪ 声の主がこちらを覗きこんで来たので俺は驚いた。 背中に半透明の羽が生えていて、瞳も黒目がちで耳も尖っていて明らかに人間ではない。 そんな人間では無いものが俺に水をかけてくる。 かけられた水は冷たく感じない変わりに温かみも何も感じない。 俺を磨くつもりなのかワンピースみたいな服の端を持ち上げると、下半身が丸見えになり下着を身に付けていなかったので男のシンボルが見えてしまった。 全く何も感じないが、とりあえず周りを見渡そうにもテレビの画面の様に景色は固定されたままだ。 ~~? 俺の周りをくるくると周り、羽の生えた男の子はもう一度俺を覗きこんでからまた俺の後ろにまわった。 また持ち上げられたのか地面が遠くなっていく。 また鈴の様な音が聞こえ始めたのできっと羽音なんだろうと思った。 景色がどんどん開けてきて、目まぐるしく景色が変わっていく。 町に出たのか大きな門を潜ると露天やら店が見えるが少し俺の知っている風景とは様子が違う。 疑問に思っていると、大きな建物の中に入っていく。 建物の中は煌びやかな装飾がされており、こんなところに入って大丈夫だろうかとぼんやり思うが身動きが取れないので仕方がない。 「おかえり。何を拾って来たんだ?」 「~!」 「ふーん。森の中に遺跡が?そんなものあったかな…」 先程から扉等は気にせず飛んでいた男の子が部屋に入った。 そこには背中まである黒髪を無造作に結んだ大きな男が居て、男の子に気がつくと片手を差し出しす。 男の子はその男の掌に俺を置いて、自分自身も掌に座った。 どうやら俺は何やらとっても小さい物になっているらしい。 話を聞いていると、俺は森の中に捨てられていたのか倒れていたのかを拾われたようだ。 まぁ男の子の声は上手く聞き取れていないが、男の言っている事が聞こえるのである程度推測できた。 「これは弱体化の指輪だな」 「~~!!!」 「ははは。今のミコーのサイズじゃ無理だな」 「~!~?」 「いいじゃないか。他に方法位いくらでもある」 男が男の子の腹に指を置くと、ビクリと男の子の体が大きく跳ねた。 俺の横にどさりと倒れた男の子の腹を男は優しくすりすりと撫でる。 更に大きく体が揺れる男の子の羽を摘まんで持ち上げると胸ポケットに仕舞う。 一方残された俺は男にまじまじと観察され始めた。 男が言っていた事を思い出すと俺は指輪になっているのではないだろうか。 なんと非現実的なんだろうと思いつつ現状を打破することなんて身動きが取れない俺としては全てをを受け入れるしか方法がない。 「弱体化の指輪か。面白い。折角だ…アイツにでも献上してやろう」 男がクスクスと笑いながら俺を何やら暗いところに入れる。 パコンという音と共に辺りが再び明るくなったところで目に飛び込んできたのは綺麗な白髪を三つ編みにしたカイとそっくりな人物がこちらを見つめていた。 現在指輪になっているらしい俺は光で目が眩むという事もなく、カイにそっくりな人物を観察する事に忙しい。 「お前が登城してくるなんて珍しいな」 「ははは。魔王様と違って忙しいもので」 「俺だって忙しいさ。お前だけだぞ俺を暇人扱いしてくるのは」 「政はほとんど部下に丸投げして自分は戦しかして無いのでは?衛生の者に吹き飛んだ腕を拾わせてるのパワハラですよ?」 「は?パワ?なんだそれ」 カイに似ている人物が男の発言に首を傾げる。 その仕草がカイそのもので妙な感動を覚えた。 俺の知っているカイよりは随分大人びて見える。 髪も俺の知っているカイよりは傷んでいるのかパサついてみえるし、肌艶もよくない。 何より目の下に大きな隈があるのを俺はどうにかしてやりたい気持ちでいっぱいになっている。 しかも腕が飛んだと聞こえた気がするので、自分をあまり鑑みていないのかもしれない。 俺のモヤモヤとする気持ちに反して目の前のカイ(仮)はニヤニヤと笑っている。 「それで?俺よりも忙しい魔道士様がわざわざ指輪を持って登城してくるなんてどういう風の吹きまわしだ?プロポーズなら受けられないぞ?」 「は?その冗談少しも笑えないんですけど。寧ろ気持ち悪くて吐きそうです」 「吐く前にこれの説明からしていけよ」 真顔で口許に手を当てた男は魔道士らしいが、職業とでもいうのだろうか益々ファンタジーだなと思った。 カイ(仮)の手元にある俺はカイ(仮)を見上げる形になるのだが、明らかに楽しそうにニヤニヤと笑っていてやはり俺の知るカイとは全然違う。 そもそもカイはこんな表情をしないし、もっと初だ。 言い方は悪いがこんな擦れた表情などしない。 「誰の発言のせいで気分が悪くなったと思ってるんだ。ゴホン。その指輪は使い魔のミコーが森で拾ってきたものです」 「森で?」 「遺跡があったらしく、そこから持ってきたと言っています」 「森の中に遺跡なんかあったか?森の中はそんなに探索は進んでいないが、お前の羽虫の気のせいなんじゃないか?」 「は?殺す…」 「うおっ!」 カイ(仮)がやれやれと大きなため息をついたところでいきなり何かが飛んできた。 カイ(仮)がさっと避けると、避けた場所が焦げていてブスブスと煙があがっている。 「何するんだいきなり!」 「お前がミコーの事を羽虫と言ったからだろ。ミコーは虫ではなくピクシーだ」 「は?どう見ても虫だろ」 魔道士の胸から飛び出した男の子はピクシーというらしい。 ピクシーが手を振り上げて怒っているらしく、また魔道士がカイ(仮)に火の玉の様な物を打ち込んでいく。 それを全て避けていくカイ(仮)の顔は実に楽しそうだった。 「いい運動になったな。まぁ、遺跡があるって話が本当なら調査しなきゃな」 「疲れた。あんたと調査に行くなんてまっぴらごめんだ。ゴーレムに案内させる」 ニヤニヤと笑うカイ(仮)が俺を指に通し光に透かすように傾けつつ魔道士に話しかけると、魔道士は心底疲れたとわざと大きなため息をついて部屋から出ていってしまった。 カイ(仮)はそれすらも楽しいのか俺を眺めながらまだ笑っている。 俺を撫でながら次はどうやってからかってやろうかという言葉が聞こえてきた。 「こんな森の中に本当に遺跡なんてあるのかよ…」 ひとりごちるカイ(仮)は周りの草を掻き分けながら進んでいる。 そんなカイ(仮)は魔道士が作ったゴーレムに先導されながら森の中を進んでいた。 魔道士の話では魔王という立場なのに、お供も付けずに1人で何処にでも行くらしい。 今もお供も連れずに魔道士が作ったどう見ても人間の姿のゴーレムに先導されながら歩いているのだから勝手に城から抜け出したカイ(仮)の側近達は気が気ではないだろうなと思えてくる。 「ここか。確かに何かの遺跡みたいだな」 道が開けた先には岩壁が崩れ、崩れた岩のブロックがゴロゴロと落ちていた。 遺跡と言うよりは廃墟と言った方が正しい様な気がするが、カイ(仮)はズンズンと中に進んでいく。 廊下の様なところを歩いていると、床が光る。 「うわっ!」 床が抜けたのか、カイ(仮)の体が落下していく。 下には何か居た様で着地した瞬間にぐちゃりと湿った音がした。 カイ(仮)が驚いて飛び退いた瞬間に音の正体が見えた。 芋虫の様な見た目なのに、触手の様な足がついている。 しかも顔の様な部分も裂け目がありその裂け目から細い触手がこちらに向けてうにょうにょと動いていて気持ちが悪い。 「くそっ!ここ淫虫の住みかになってるのかよ…」 カイ(仮)が舌打ちをして目の前に手をかざす。 何か呪文を唱えた瞬間に手の先から淡い光が放たれた。 カイ(仮)からは“は?”とか“え?”という戸惑いの声が聞こえてきたので、本来の威力では無かったのかもしれない。 そう言えば魔術師が俺の事を“弱体化の指輪”と呼んでいた事を思い出したが、それをカイ(仮)に伝えてやる術が今の俺には無かった。 「近付くな!」 カイ(仮)に近付く虫を腰に差していた剣で威嚇するが、全く効果はなかった。 振り上げたカイ(仮)の腕に虫の触手状の足が絡み付く。 振り払おうと踠けば踠くほど他の触手がカイ(仮)に絡み付いて服の中に侵入する。 服の中に侵入した触手は服を破きカイ(仮)の体をまさぐりはじめた。 「うぐっ!」 遂にカイの胎内に触手が挿入されぐちゃぐちゃという音と共に抜き差しされる。 今度は乳首に虫の頭部らしい部位が近付いていく。 虫の頭部から針の様な触手を乳首に刺されたカイ(仮)の乳首がむくむくとのびた。 そんな歪にのびた乳首を何度も針の様な触手が貫く。 体が大きく揺れぶしゃぶしゃっと下半身からは壊れた蛇口の様に液体が噴射される。 「ひゃ、ひゃめ…ろ」 カイ(仮)の乳首やペニスの所々が水ぶくれの様に膨れている。 相変わらずぐちゃぐちゃと音を立てて触手が孔を抜き差ししていた。 胎内に虫の体液を注がれる瞬間には虫がキィィィと高い声で鳴く。 「お゛ごっ!お゛お゛お゛お゛!」 カイ(仮)の腰がへこへこと上下に揺れると、胎内に入り込んだ別の虫が顔を出してズルズルと排泄されてくる。 ぷらんと孔から垂れる虫は今度はゆっくりとカイ(仮)の胎内に戻っていく。 「か、カイっ!」 悶えるカイ(仮)をどうにかしてやりたくて、体を動かしたいと願った。 ぐっと意識が引き上げられる感覚に俺ははっとする。 眼を開けた瞬間、俺はホテルの一室に居た。 横には安らかに眠るカイが居る。 手にはびっしょりと汗をかいていて、おそるおそるカイのルームウェアを捲ってみると可愛らしい乳首がある。 よかった夢の様に無様な乳首ではなく、俺が現在進行形で育てている可愛らしい乳首だ。 今度は顔を覗き込んでみると目の下の隈もなく薔薇色の頬をしている。 変な夢だったなと思いながらも、俺は少し恐怖を覚えているのかカイをぎゅっと抱き締めて頭に顔を埋めて大きく息を吸った。

ともだちにシェアしよう!