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第36話

俺は大きなため息を吐いて足を組み直す。 目の前は正に地獄絵図と化していた。 「はぁ。はぁ。卯月くん」 「こちらも…」 何で俺は縛り上げて転がしているおっさん2人に羨望の眼差して見られているんだろう。 確かに期日が来たら料亭で相手するとは言った。 言ったが、俺が抱かれるだけかと思ったら院長が自分を縛って欲しいとプレイ用ではなく工事現場で使う用の黄色と黒のトラロープを出してきたので頭を抱えた。 それに便乗して木下教授まで折角なので自分も縛って欲しいと言ってきやがる。 余りにも面倒くさくてお互いに好きに縛りあってくれと言ったら喜んでお互いに縛りあいをしだしたのでこれって果たして俺は要るのかと思う。 最後に手を縛るのはお互いには出来なかった様で取り敢えず縛ってやるが、ポリエチレン製なのでコシがあって少し縛りにくい。 「この…蓮蒸しって料理出汁がきいてて美味しいですね。あ、鰻も入ってるんだ」 俺はおっさん2人の目線など気にせず席に戻り懐石料理を楽しむ。 高級料亭なので料理は絶品なのだが、襖で繋がっている隣の部屋の時代錯誤の様なあの真っ赤な布団はなんだろう。 時代劇かよと思いながらおっさん2人が転がる布団を眺める。 「お互いに慰めあっててください。仲良しでしょ?」 「いや…それは…」 「そうなん…だが」 俺は卵を割って箸でときながら2人に言うと、お互い目配せしながら戸惑っている様子だった。 まぁそうだろうなと思いつつ俺は湯気が出始めた一人用のすき焼き鍋の木蓋を開ける。 ふわりと香る割下と具材の匂いに、食欲がそそられた。 「分かりました。今から襖を閉めておきますので、そこでお互いにどちらが先に射精するか勝負してください。射精しなかった方に御褒美をあげます」 2人から送られる視線にも嫌気がさして来たのでよいしょっと立ち上がり、俺は襖に軽く寄りかかる。 面倒なのでお互いに競い合う様に言って襖を閉めた。 俺はいそいそと席に戻り早速肉をといた卵にダイブさせる。 脂の乗った神戸ビーフに卵が絡んで最高に美味しい。 とりあえず院長と教授の分の肉や自分が美味しいなと思った料理も遠慮なく食べてやった。 襖の奥からじゅるじゅると下品な水音が聞こえてくるので、お互いに舐めあっているのかもしれない。 想像すると気持ちが悪いので食事に専念することにした。 「終わりました?」 「わた…私が勝ったぞ」 音が止んでから少し時間を置いてからまた立ち上がってゆっくりと襖を開ける。 脂の酸化した所謂加齢臭の後に独特の臭いが部屋に充満していた。 先に食事をしておいて良かったと思いつつ部屋の中へ足を踏み入れる。 ぐったりとしている木下教授の横で院長が息を切らしながらうごうごと芋虫の様に蠢いていた。 「はいはい。其れでは御褒美でしたね…」 転がる院長の脇腹に足をかけ、それを足掛かりに身体を浮かせる。 脇腹にかけた足と反対側の足が浮き上がったのですかさず足を前に出して教授のペニスを踏む。 爪先に体重を乗せて踏んでやるとホースを踏んだ時の様にぶるぶると振動が足の裏に伝わってきた。 すぐにぶしゃっと先端から精液が飛び出してきて俺の足を汚す。 またはぁと大きくため息を吐いて汚れた足を上げてけんけんで隣に転がる木下教授のところまで行って汚れた足を臀部に擦り付ける。 最後に木下教授をひと蹴りしてから部屋の隅に置いてあった院長の鞄に近づいた。 「呆れた。どれだけ玩具持ってきてるんですか?」 鞄の中身は大人の玩具でぎっしり埋まっており、もし院長が縛って欲しいと言い出さなければ俺に使われていたと思うとゾッとする。 多分今日はこのまま玩具を使って2人を満足させれば2人は気持ち良くなれて、俺は体力を使わずに済むわけだ。 画期的ではないかと自分の考えに思わず頷いてしまった。 「えっと…これはこう!これはこうで…これがこう!」 「うぅ」 「うぁぁ」 院長の鞄をとりあえず2人の傍まで引寄せ、ペニスには各々オナホールと孔にはローションをたっぷり塗ったバイブを押し込んだ。 木下教授ははじめてかと思いきや、すんなりバイブが入ったので少し驚いた。 とりあえずスイッチを入れると陸に打ち上げられた魚の様にビチビチと跳ねてのたうち回る。 その動きに当たらない様に背後に周り、口に布を噛ませ目には鞄の中からアイマスクを取り出し目元に被せた。 口に布を噛ませる時は背中に足をかけて両手で強く布を引っ張ってやった。 中性の貴族女性はウエストを細く見せるためにコルセットを着用していて、1人では当然着用できないので侍女の手伝いが必要だった。 極限まで引き絞るコルセットは侍女がコルセットに足をかけて引き絞っていたとの描写がある程力が要る物なのだ。 絶対に侍女達は日頃の鬱憤をそこで晴らして居たんだろうなと想像しながら2人の背中に足をかけていた。 「はぁ。疲れた…」 作業をするために中腰になっていたので上半身を戻して腰をトントンと叩く。 軽く教授と院長の肩を蹴ってからそのまま肩をぐるぐるとまわして2人の間にしゃがみこんだ。 「満足しました?」 「むぅー!!」 「むむぅ!!」 「あ、やっぱりダメですか…」 耳許で話しかければ抗議の声があがる。 やっぱりそんなに甘くないかと思いつつとりあえず木下教授の方のオナホを掴んで乱暴に上下に動かす。 ぎゅぽぎゅぽとローションと空気が混ざった音がして、くねくねと木下教授が身体をくねらせる。 身体が少し硬直したのを見逃さずに手を止めて、今度は院長の方のオナホを掴む。 木下教授と同じ様にオナホを上下に動かして寸止めを繰り返した。 絶頂出来なかった事に毎回不満の声があがるので面倒になって両手でオナホを支えてやると無様に腰を揺らしているのでとても滑稽だ。 「やへ!」 「ほへへ!!」 「まだしたいって言ったのお二人じゃないですか。私いい加減に手が疲れてきたんですけど?」 何はともあれ2人の相手などしたくなかったので、何度も絞る取る勢いでオナホを動かしてやったり尻の玩具も鞄に入っていた物は全て使ってやる。 オナホに電気マッサージ機を押し当てたりと何度目かの射精で2人ともやっと動かなくなった。 「もう2人で付き合ったらどうですか?それが一番平和でしょう」 やっと動かなくなった塊を横目にふぅと額に汗をかいていたのか汗を手の甲で拭う。 思わずよいしょっと言いながら立ち上がって部屋の隅に放り投げた木下教授のジャケットと院長のジャケットから財布を取り出してそれぞれ5000円分貰って、財布を戻しながら内ポケットに入っていた封筒を取り出す。 中を見ると札束が入っていたので遠慮なくバッグに押し込む。 今回は税金対策に現金で持ってくる様に言っていたので、この封筒は自分宛なのだろうと確信があった。 「それではお疲れ様でした」 なるべく声を潜めて部屋を出る。 高級料亭なので店の人には会わない様な廊下の構造になっているので廊下は俺以外に人が歩いていない。 もう走る位の速度で歩きながらどうせ電車で帰るのだから最寄り駅の近くのパティスリーで何か買って帰ろうかと思考を巡らせていると、曲がり角で人にぶつかりそうになった。 慌てて前進していた力を後ろに移動させると少しよろめいてしまう。 しかし自分も走るように移動していたので相手には申し訳なく思って謝ろうと顔をあげる。 「申し訳ありません。急いで…」 「こちらこそ申し訳ありません」 多分同世代の少女と言って良いほど顔に幼さの残る綺麗な子がそこには立っていた。 こちらが頭を下げると、明らかに育ちが良いのか深々と綺麗なお辞儀をされてしまう。 不躾ながら服装を見ると上品なレースがあしらわれたブラウスに紺色の足首まであるロングスカートを 履いていている。 首もとには少女らしさを演出する様なスカートと同系色のリボンタイがあしらわれていた。 想像の“お嬢様”とはこういう格好だろうという上品な服装だ。 これでカテーシーまでされていたら感動と言うより笑いが勝っていたかもしれない。 「連れが呼んでおりますので…」 「あ、はい」 別に誰かが呼んでいる声など全く聞こえなかったが、少女はそそくさと別の離れの方に足早に去っていった。 以前院長がここは如月家の現当主、カイにとっては祖父が戦後出資をしてやった旅館なので融通が利くし芸能人や財界人等もプライベートや会合などでここを使うのだと言っていた。 そして、一般客が使う母屋からタコの足のようにのびたVIPが使う離れには宿泊もできるのでそう言った目的で使われる事も多いのだとか。 まぁ、先程の時代錯誤な真っ赤な布団などは高級料亭を使うような年寄りは喜ぶかもしれない。 つまりあの少女も所謂“お仲間”というやつだ。 しかし、何処かで見たことがある気がして首を捻る。 「おっと。パティスリーのパン・オ・ショコラの焼きあがりの時間に遅れてしまう」 ふと目に入った時計の文字盤を見て帰りに寄ろうと思っていたパティスリーのパン・オ・ショコラが出てくる時間が差し迫っている事を思い出して俺も玄関の方に向かう。 あそこのパティスリーのパン・オ・ショコラはチョコレートがたっぷり入っていてミルクたっぷりのカフェ・オ・レと一緒に食べると最高なのだ。 まだやつどきなのでカイと遅めのティータイムをしようとパン・オ・ショコラの他に焼き菓子を数点買おうとメニューを思い出しながら歩いているとあっという間に料亭から一番近い駅につく。 電車を待つ時間もカイやお菓子の事を考えていたら料亭での事はすっかり忘れてしまった。 「ただいまー!」」 焼きたてのパン・オ・ショコラの温もりと紙袋から漂う香りにテンションも上がって大きな声で帰宅を告げる。 カイは相変わらずソファーで本を読んでいるので、俺はキッチンでそのまま手を洗いミルクパンに牛乳を入れて火にかけた。 沸々と鍋肌に牛乳の泡が発生してきている。 カイとお揃いのペアカップにインスタントコーヒーと砂糖を少し入れて温めた牛乳を注ぐ。 パン・オ・ショコラを皿の上に出してダイニングテーブルに皿とカップを持っていく。 「カイただいま!おやつ食べようよ」 「おか…えり」 「匂いで気が付いたんでしょ?ほらほら席に着いて」 気まずそうにするカイを無視して明るく声をかけてグイグイとダイニングテーブルに着かせる。 半ば無理やりティータイムをはじめた。 パン・オ・ショコラを齧るとクロワッサンのパリッとした食感の後にジュワリとチョコレートが染み出してくる。 そう言えばあの少女は航と一緒に居る写真か何かを見たか見せられた事を思い出した。 しかし、目の前でカイがボロボロとクロワッサンを盛大に溢しているのを見たらそれもすぐに忘れてしまった。

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