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第4話 ふたりの夢
「ちゃんと食べてるか。金に困ってないか」
「コンビニバイト続いてるよ。バイトの人たち優しいんだ。学校とは大違い」
よく、瀬那はバイト先の人との楽しいエピソードを語ってくれる。瀬那の食い扶持はコンビニバイトだけだ。
「お母さんが帰ってきたら、東京でアパレル店員になるんだ」
この地域から東京で働くには、電車を乗り継ぐだけでは済まない。毎日通うのであれば、横浜や川崎に住んで、一本乗り継げば山手線で職場に行けるくらいでないと難しいだろう。
いつか母親が帰ってくる。その時に自分がいないと悲しませてしまう。そういって、瀬那は毎日必ず家に帰るようにしている。外泊はしないそうだ。
「大丈夫。瀬那は化粧すると凄く若く見えるから、何歳でもアパレル店員になれる」
身勝手に、すぐ帰ってくるとは陽樹には言えない。瀬那は、その顔で言う? と言いたそうにこちらを見てくる。陽樹が童顔だからだ。姉弟に間違われた回数は片手で数え切れない。
陽樹が車に乗っているのは大学に通うのに便利だからだけではない、決して高校生ではないと周りに知らしめたいというのと、憧れの大型バイクはペダルに脚が届かなかったからだ。中型で我慢するくらいなら、車にしようかと考えたのだ。
「いつでも会いに来るからな。寂しくないように」
「そういえば陽樹、今日は何時までいられるの」
「今日は家に親父の会社の人が来てパーティーがあるから、俺は跡取りじゃないけど、次男も顔見せ無きゃ。だから七時くらいには帰るか」
陽樹の父親は海外の輸入商品を取り扱う会社を代々経営している。年の離れた兄が会社を継いでくれたため、陽樹は将来を自由に選ぶことができた。
経済学を学ぶことができる大学へ進学した陽樹は、一年生でアメリカへ留学。経済が回る様子を肌で感じてきた。そのとき、陽樹は自分の歩きたい将来を見つけることができた。
それは、子供が悩みを簡単に相談できて、余計に悩まされることのないサービスを作ることだ。当時すでに子供の悩みを相談できるサービスはあったが、大人の了承が必要であったり、子供が未成年のうちのネット閲覧履歴やアプリの利用履歴は親が監視することができるアプリを利用することが定番になっていたため、親に相談できない悩みを相談することは敷居が高かった。
相談するなら匿名で使えるアプリが沢山あるかも知れないが、悪い大人が絡んでくる確率は少ないとはいえない現状があった。未成年と出会う目的で悩みにつけ込む大人がいれば、本気で悩んでいる子供に嘘の解決方法を教えたり、暴言を吐いたりしてストレス発散の場として利用する身勝手な者も出てくる。
これらの問題をクリアする仕組みを取材やアンケートを通して情報収集、データを纏めてシステムを構築した。知識の面では教授の力を借りて、金銭の面ではクラウドファインディングを使って有志の人たちの力を借りた。
まだまだ軌道に乗ったとはいえず、クリアすべき問題も多い。
大学生で企業した陽樹は、真っ先に瀬那を誘った。半年ほど前のことだ。
当時の瀬那は母親が突如出ていったため、慣れない一人暮らしに翻弄されていた。瀬那の母が置いていった貯金が残っているうちに、瀬那は急いで自分で生計を立てる必要があった。
しかし、瀬那はボランティアという形式で陽樹に協力することとなった。ビジネスパートナーとしてではなく。瀬那にとっても母親が出ていったすぐで色々と忙しかっただろうし、瀬那にとって働くといういのは、お店でバイトして、いつか正社員になる。そういったルートが瀬那にとってなじみ深いものだったのだろうと陽樹は思っている。
「そうだ瀬那に相談しようと思ってたんだった」
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