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22 朝
カーテンの隙間から漏れる光で、和樹は目を覚ました。
スマホで時間を確認すると6時30分。
いつも1時間ほど朝のランニングをしているから、同じ習慣で起きてしまったようだ。
身を捩ろうとするとまだ引っ張られる感覚がする。
朝になっても佑は和樹の服を握ったままだったらしい。
和樹は少し迷った後で、そっと手を伸ばし、その頭に触れる。
ストレートだがふわふわした猫っ毛で、撫でればまた頭が寄ってくるのが分かる。
普段は絶対に見せない姿だが、その心の中に何を隠し、何を抱え込んでしまっているのだろうか。
「いつか、俺らにも話してくれよ」
自分や歩を真っ直ぐに受け容れてくれた佑と拓馬のように、きっとどんな事情があったとしても自分も歩も受け容れられるだろう、という自信はある。
そのまま頭から手を離し、まだ眠る佑を見つめる。
昨日の変な感情を思い出したり、睫毛長いな、なんてくだらない事を思ったりしながら、佑が目を覚ますのを待っていた。
「ん…?あっ!?」
そうしているうちに、ゆっくりと佑の目が開いた。
そう認識するより前に、自分が和樹の服を握って彼とかなり近い距離に居ることに、佑は弾かれたように飛び起きた。
机にぶつかるゴツッという音とともに、1人分の空間が間に空いて少しだけ寂しくなる。
「おはよう、佑。ぶつけたみたいだけど大丈夫?」
「お、はよ…大丈夫…」
和樹が声を掛ければ、佑は真っ青な顔をして視線を彷徨わせた。
「あの、ご、ごめん、服、握ってたんだね…ぐしゃぐしゃになっちゃってて、ごめん」
「いいよ、そんなの」
「ごめん、なさい」
「大丈夫、気にしなくていいよ」
和樹は優しく微笑みかけるが、くしゃ、と苦しそうな表情になる佑。
やはり起きている時には人との接触は苦手らしく、服を握っていた右手をぎゅうっと握りしめ、左手で身体を抱き締めるようにしている。
佑は触ったところから和樹を汚してしまうような、そんな錯覚に陥り手が震えた。
「この前みたいに具合悪くなったりしてないか?」
「あ…う、ん、大丈夫」
体調を気遣えば、佑は意外そうに目を丸くした。
和樹にとっては、服に皴がついてしまったことよりも佑の体調の方が大事だった。
「佑が大丈夫ならいい。そんなに気にしなくていいからな。歩とかも毎日のようにくっついてきてるわけだし、別に嫌じゃない」
「うん…ありがとう」
少し気が楽になったのか、ほっと身体を抱き締める左手の力が抜けた。
そのまま2人で話しながら、歩と拓馬が起きるのを待つ。
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