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23 慣れ

「そういえば、カズ、寝れた?枕変わると駄目だって、前言ってたでしょ」 「あぁ、寝れたよ。結構普段と変わらない感じで寝れたから良かった」 「そっか、良かった。ごめんね、俺いつの間にか寝ちゃってたみたい」 「歩もいつの間にか寝てたよ。2人とも楽しそうに話してたな」 「うん。共通の好きなものとかがたくさん見つかって嬉しかったんだ」 もっと色々話していたかったなあ、と名残惜しそうに佑は笑う。 きっと今後も一緒に過ごすことは多いだろうし、6月のキャンプでだって色々話せるだろう、そう言えば、佑は嬉しそうにまた笑った。 「拓馬以外の人とあんまり仲良くなれなかったから嬉しい。2人が一緒の班で良かった」 「それは俺達も同じことを思ってるよ。きっと歩も」 2人で顔を見合わせて笑っていると、うーんと伸びをした声がして拓馬が起き上がった。 「ふぁ…2人とも早いね、おはよ」 「あ、おはよう拓馬。ごめんね、結局いつの間にか寝てて泊まっちゃってた」 「いーや?いいよ?佑がちゃんと寝れてたから良かったし。カズもすぐ寝れた?」 「ああ、大丈夫だ。ありがとう」 拓馬は穏やかな佑の顔色を見てほっと胸を撫で下ろす。 拓馬がずっと心配していたのは、和樹や歩が一緒にいる状態で佑がちゃんと休めるかどうか、ということだった。 6月のキャンプではこのメンバーで2泊3日過ごすことになるため、自然に眠りにつくことができていたのなら当日も大丈夫だろうと安心する。 それだけこの4人で居ることに慣れ、心も許せているということだろう。 それに、少し前から起きていて様子を伺っていた限り、起床後の和樹との関係も良さそうに見えた。 「2人とも起きるの早くね?」 「俺はいつもこれくらいに起きるのが習慣なんだよ」 「俺はもう少し長く寝てるけど、今日は早く目が覚めちゃったな」 「そっか。じゃあ今日は講義は休みだけど俺も歩もサークルの練習あるし、そろそろ歩も起こそっかな。歩、起きろー」 「んー…あーい…」 4人はそれぞれ前日の余り物で作った朝食を摂ると、拓馬と歩はサークルの練習へと向かうことになったため、佑と和樹はそれぞれ自宅へと帰ることにした。 帰り道、佑は無意識に近づいてしまっていた和樹との距離を思い返していた。 自分は冷や汗が出るほど緊張してしまっていたのに、和樹は柔らかく微笑んでそれを受け入れてくれていて…ずっと一緒にいることへの慣れが、自分にもいい影響をもたらしてくれているのだろうかと意外だったのを覚えている。 もしかしたらこれからは人と距離を縮められるかも、なんて淡い期待を抱いてしまったりもした。

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