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第2話

 撮影が終わった後、家で少し仮眠をとってから真那人は実咲との待ち合わせ場所に向かった。黒地に大判の花柄が描かれている柄シャツにクラッシュデニムという服のチョイスだ。  待ち合わせ場所は真那人の家からも近く、ぷらぷらと歩いていれば到着できる。家から最寄りの駅前で会うのが恒例なのだ。  実は一ヶ月前に実咲が同じ街に越してきていたのだが、真那人はその事実を知っていたものの対して関心もなく気にしていない。  街を歩いていると、すれ違う女子たちが振り返っていく。 真那人は気にも留めないが、何やら後ろできゃあきゃあ言われているようだということは分かる。彼にとっては普段と変わらない日常で、『また言ってる』くらいのものだ。 「おっそーい」  待ち合わせ場所に着くと、やや不満げな実咲が待っていた。  「なんでもっと早く来れないのよぉ」  上目遣いに実咲は文句を漏らす。彼女としては、いつもなかなか時間通りに来てくれない真那人に業を煮やしているようだ。 今だって三十分遅れている。 それでも真那人と会うというのは……。 「悪いな。寝ててさぁ、寝過ごした」 「もぉ。ちゃんとしてよ。これで仕事はきっちりなんだから分からないわ。私のことも真面目に考えて欲しいわよ」  そう愚痴りながらも、実咲が真那人には執心しているのが分かる。  二十七歳の彼女は、ティーンの頃から有名なモデルで、現在も見た目をキープし第一線で活躍している女だ。   真那人が実咲と一番仲いいのは、生い立ちの境遇が似ているから。  真那人は父親と暮らした記憶がない。父親と母親は愛人関係にあり、真那人が生まれた時には父親は既に他の女と結婚していた。つまり、真那人は私生児で、父親と正妻の間には腹違いの弟がいる。  実咲の場合も、既に父親は亡くなったそうだが腹違いの兄がいて折り合いが悪いのだと彼女はいつもボヤいている。 実咲と約束をしていたイタリアンに行くと、ちょうど空いていて2人の好きな白ワインを飲んだ。 いつもと変わらない時間。日常の出来事やテレビの内容など、他愛もない話をする。そう、友達のように。真那人にしてみれば、実咲は“仲の良い友達”だ。 しかし実咲の方はというと……。

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