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第3話
真那人はプライベートでは奔放に生きている。遊び歩き、実咲や後輩かつ友達の拓実以外なら男女問わず身体の関係を持つ有り様だ。
実咲らと一線を超えないのは、失いたくないから。
それだけ大事な友達だとは思っている。
イタリアンの店を出た後は、二人でバーに入った。お互いにまだ入ったことのなかった店で、なかなか雰囲気も良さ気だ。
店に入るなり実咲が言う。
「良い感じのお店だね」
「あぁ」
真那人がカウンター席の椅子に座ると、実咲はくっつき気味にして並んで座った。あからさますぎるし、なんとなく窮屈だ。
「お前くっつくなよ」
「え~?別にこんくらいいいじゃない」
彼女は少しだけ口を尖らせた。
「あ、私マティーニください!」
「かしこまりました」
スーツをビシっと着こなしたバーテンダーが、恭しく返事をする。
マティーニは二十五度以上のアルコール度数で、辛口のカクテルだ。昔は甘口カクテルだったそうだが、時代の移り変わりの中で辛口へと変遷を遂げている。
「お前さ、それ飲むの初めてだよな。大丈夫なのか?」
「あ、前に飲んだことあるのよ?真那人としか飲みにいかないわけじゃないもん、私」
実咲はマティーニを二杯目もオーダーし、酔いが回ったようだった。
真那人の肩にしなだれかかってくる。
「おい」
そこまで嫌というわけではないが、こういうことをされると戸惑うし、実咲とはそんな仲ではないと真那人は思っているのだ。
「もう酔っちゃったぁ」
実咲は身体をくねくねさせて、あからさまに真那人にくっついてくる。
「お前、大丈夫かよ。そろそろ帰るか?」
「え?まだいいじゃん。一緒にいたいよ」
一緒にいたいとか、そういう言葉は有り難いものの、あまり言わないで欲しいかもしれない。
例え酔いに任せた言葉であっても。
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