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第5話
「私さ、実は真那人のこと本気で好きなの」
実咲が意を決して言うと、真那人は驚き目を大きく見開いた。そんな風に実咲に思われていたとは、ほぼ気付いていなかったから。いや、何となく気付いたけれど、気付かないフリをしていただけかもしれないが……。
「実咲……ありがとう」
「じゃあ……」
実咲が言いかけたのを、真那人は阻んだ。
「気持ちは嬉しいけどさ、お前とは付き合えない」
「え、なんでよ」
実咲の顔は、みるみる曇っていく。
「実咲は、大事な友達だと思ってるから、ハンパに手ぇ出せなかった。関係壊したくなかったしな」
「わ、私は付き合いたいと言ってるの」
それは分かってる。けれど無理なのだ。
「分かってるさ。でもな、やっぱ無理だ。それ以上には見れない……悪い」
真那人にはそれしか言うことができなかった。女性と関係を持つことはあっても、恋愛感情を抱くことはこれまでなかった。学生時代からずっと。相手が男でも、真那人は人を本気で好きになったことがない。だからこそ、適当に遊ぶことができた。
「私、本気なのよ?」
実咲の頬を涙が伝う。
真那人にも良心がないわけではない。実咲への申し訳なさが、心を覆った。
「ごめん。でも本当にありがとう。俺なんか好きになってくれて」
真那人は最初で最後に実咲を抱きしめた。
「優しくしないでよ……諦められなくなるじゃない」
「ホントごめん」
真那人には謝ることしかできなかった。
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