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第7話
二日後、約束がありマンションを出ようとロビーまで降りると、待ち構えていたかのように男たちが声を掛けてきた。
「椎名真那人さんですね?」
いかにも怪しい雰囲気を漂わせた連中だった。
「そう、だけど……」
真那人は警戒心を顕わに返答した。
「手荒なことはいたしません。一緒に来ていただけますか」
「あんたら、ダレ?」
「逢沢会長の、部下の者です」
逢沢とは、真那人の父親の名字だ。
「あーぁ……」
つまり、力づくで連れて行くということか。
「会長がお待ちです。車へどうぞ」
男たちは真那人を囲み、両腕を引っ張った。
「離せっ!」
最初こそ抵抗したものの、ロビーで騒ぎ立てることもできず、男たちの力に抗うこともできなかった。そして、腕を引かれて黒塗りの車に乗せられた。
半ば誘拐のような形で連れ去られ、真那人は高級感のある黒塗りの車に押し込められた。運転手の顔はわからない。真那人は自分を引っ張ってきた男たちに挟まれる形で後部座席に座った。
人生最大とも言えるほどにピンチを感じ、車内で騒いだりして抵抗はしたものの、左側を押さえる父親の部下らしき者に制される。真那人の右側に座る男に、「騒がないでください。手荒な真似はいたしません。あなたに、来ていただくようにとの、会長の命です」と冷静に諭してきた。
一体どこに連れていく気だと思うが、取り敢えず真那人は大人しくすることにした。
きっと父親は、ただ「着いてこい」と言っても真那人が素直に従うとは思えなかったからこんな手段をとったのだろう。
三十分ほど走り到着したのは、新しい印象の高層ビルだった。
『でか……』
それが真那人の第一印象だ。
車はビルの玄関先で停車した。
車のドアを開けられ、外に出てみる。するとますます緊張感が高まった。どうやらこれから、父親と対峙しなければならないようだ。
男二人に連れてこられたのは、ビルの上階にある会長室だった。
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