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第11話
時が流れて、すっかり過しやすい気候になった十月から、真那人は正式にKSグループに入ることになった。
モデルを辞める時は、事務所に当然驚かれたし引き止められた。真那人が人気モデルだったこともある。事務所も手放したくないだろう。
しかし、事情を話したら「それなら」と社長も渋々のようだが了承してくれた。そして、表向きには真実は伏せてもらえるように頼んだ。
モデル事務所の社長への挨拶が終わり、部屋を出て帰ろうとしていたら声をかけられた。
「真那人さん!どうしたんすか?」
拓実だった。
彼にも、言うしかないだろう。
「拓実……俺さ、モデル辞めるわ」
「え、え!?何でですか?何で突然?」
あまりにいきなりのことで、拓実も驚いたようだ。
「まぁ、結構長くやってきてさ、もうそろそろ飽きてきたかなって」
嘘だ。本当は、そんな理由じゃない……。
「え?そんなまさか……何か、明確な理由があるんでしょう?そうですよね、真那人さん」
「そんなんねぇって。お前そんなにしつこかったか?」
真那人は少し笑った。
「さ、寂しいんですよ……真那人さんがいなくなるの……」
「サンキュ。そう言ってくれんの、お前だけだわ。ホント可愛いな」
真那人が頭をポンポンすると、拓実はやや動揺して顔を赤らめた。
けれど、真那人は拓実の心の内に気付かない。
「そんな……真那人さん、お、俺本当は!」
拓実が意気込んで何かを伝えようとしたところ、真那人の携帯電話が鳴った。父親からのメールで、話があるということだった。
「悪い、用事が入ったから行かなきゃなんね。また連絡はするから」
そう言い置いて、真那人は父親が待つ会社へと向かった。もちろん、拓実が言おうとしていたことは聞かずに。
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