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第13話
見合いの翌日、父親に見合いの相手を断ろうかと考えながら退勤後に会社の一階に降りて歩いていると、ロビーの受付で受付嬢に何やら話しかけている男がいるのに気付いた。
スーツ姿で、長身の爽やかな顔立ちの男だ。
真那人は男に気付きはしたけれど、自分とは関係ないだろうと思いスルーしようとした。
だが、その男はこちらに気付き目を瞠ったのだ。
「真那人……逢沢真那人さん!」
覚えのない人間から名前をいきなり呼ばれて、真那人の足が止まる。
「……誰?」
一体誰だ、なぜ自分を知っている?真那人は戸惑った。
「あぁ、これは失礼。私はモデル事務所の者です」
「モデル、事務所??」
「君は知っているかな、ゴールドプロダクション」
「知ってるけど……なぜ俺を?」
「あなたと見合いをさせていただいた、周防律子の兄です」
周防と名乗った男は、ニコリと微笑んだ。
「俺に何か用ですか?」
なぜ、見合い相手の兄が突然現れるのだろうか。
「あなたを待っていました。これから、お時間ありますか?」
「まぁ、後は帰るだけですけど……」
真那人は警戒心を解かない。
「では、ここでは何なのでどこかで食事でもいかがでしょう」
初対面の相手と食事をするなど、ほとんどしたことがなかったが、父親が見合いをさせた相手の家族なら問題ないだろうかとも思う。
「まぁ、いいですけど」
「それは良かった!では行きましょうか」
周防という男はまた満面の笑みを見せてきたので、真那人は不覚にも少しだけドキリとしてしまった。
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