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第14話

周防に連れていかれたのは、真那人の会社からも近い高そうなフレンチだった。 周防がなぜここを選択したのか、真那人には分からない。  席に着いてコース料理を一通り食べ終えると、周防が切り出した。 「改めまして。周防洋二といいます。突然こうして現れまして申し訳ありません」 「いえ。俺に、用があるんですよね」  真那人はそれが気になっていた。 「あぁ、えぇそうなんです。今日は妹の気持ちをお伝えにきました」  薄々勘付いてはいたが、やはりそうか。 「そうでしたか。でも、なぜあなたが?」 「妹が、有名なモデルのあなたと見合いをしたと聞き、私から妹に頼んだんです。私に行かせてくれと。まぁ、こういうのは電話でも問題ないんでしょうけど」 「もう辞めましたけどね、モデルは」  真那人が苦笑すると、周防は「それは存じてますけど、あなたに会って見たかったんです」と言った。  真那人は『なぜだ?』と思った。妹の見合い相手だからか、モデル業界の人間だからトップモデルだった真那人に会ってみたかったのか。 「何でですか?俺がモデルだったからですか?」 「えぇ。律子が見合いをすると聞いて、相手がどんな方か気になったんです。聞いたら元有名モデルで、しかもKSグループのご子息だと知り驚きました」 「まぁ、色々あったんで」 「もう、モデルはやらないんですか?」 「そうですね。決めたことなんで」  真那人がそう言うと、周防はじっと見つめた。まるで真那人の中にある真実を探るように。 「そうですか。それは残念。あなたなら、もっと輝けただろうに」  そう呟く周防の表情に、真那人はなぜかまたドキリとした。 「ありがとうございます。でも、仕方ないですから。……で……」 「で?」 「見合いの件でしたよね」 「あぁ、そうでした。実は申し訳ないのですが、律子からはお断りして欲しいと言われまして」  その返答に、正直真那人はホッとした。自分も断ろうと思っていたから。 まだ父親には言っていないが、どうやら先に振られたようだ。

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