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第16話
三年後、KSグループではいよいよ新しいファッション雑誌のセクションを立ち上げる準備を本格的に開始していた。
今は一月で、七月の創刊を目指す。
真那人も雑誌の編集部で学び、ある程度は成長できたと思う。
普段の勤務で精一杯で、もう、昔のように遊んではいない。
それでも、周防との縁は続いていた。
周防の経営するモデル事務所も三年の間により大きくなっていた。
真那人は、いつの間にか周防に懐きすっかり友達同士になった。
この日は、年が明けて初めて周防とご飯を食べることになっている。
「年明けたな。どうなってる?雑誌の準備は」
「あー、もう忙しくて死にそう」
「そういや、ちょっとやつれた?」
周防は心配そうに見つめてきた。真那人はそれだけでドキリとしてしまう。
自分でも、そんな心のさざなみにも本当はとっくに気付いている。しかし、それをやり過ごしながら既に三年も周防と関わってきた。
「そう?毎日残業でさ、睡眠時間も少ないかも」
「親父さんも、真那人ができると見込んでるから新部門任せてるんだろうからな」
「どうだろうな」
父親の顔を思い出し、真那人は苦笑した。正確には、父親としては“やってもらわなければ困る”といったところだろうか。
真那人だって意地もあるし、漕ぎ出そうとしている船を投げ出して降りることはしたくない。
「メンズだっけ。モデルとかどうなの?専属とか付けるの?」
「そこも考えてんだけど、まだ決まってないんだよな」
以前世話になっていた事務所に頼るのも躊躇われ、肝心の紙面を飾るイケメンたちを揃えられていなかった。
「そうか……なら、ウチのモデルも見てみろよ。良い子入ってるから」
「え、そうなの?じゃ、リスト見せてもらえる?」
「いいよ。じゃ、今度ウチで打ち合わせしよう」
「わかった。サンキュ」
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