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第17話

 後日、真那人は周防のモデル事務所を訪れた。 「いらっしゃい!良く来たな」  周防のいる部屋の中に入ると、彼が笑顔で迎えてくれた。  ここは小会議室ということで、室内はさほど広くない。 長テーブルが四角型に設置されていて、ちょっとした会議ができる程度の空間だ。  二人並んで座ると、周防が置いてあったファイルを開いた。 「これ、ウチのメンズモデルたち。ちょっと見てみて」 「あぁ、サンキュ」  雑誌の専属になってくれるモデルを探しに来たから、真那人もファイルを素直に受け取りモデルのリストに目を落とした。 見ると、なかなかのクオリティの高い顔ぶればかりで、真那人の覚えている顔もあった。皆にお願いしたいくらいだった。 次のページがあることに気付き、捲ってみると真那人は一人のモデルに目が釘付けになった。 「あいつ……なんで……」  真那人の目線の先にあったのは、かつて事務所の後輩で仲良くしていた拓実の写真だった。 拓実は真那人がモデル界を去ってから、周防の事務所に移籍していたのだ。 真那人はそれを聞いた記憶がなかった。もしかしたら聞いたのかもしれないが、日々の事に忙しくて失念していたらしい。 周防も、真那人の見つめる先に写っている男の顔を見た。 「あ、お前拓実を知ってるんだっけか」 「同じ事務所で、よくつるんでたから」 「へぇ……人気モデルだった頃の真那人を知ってるんだ……俺の知らない、お前をな」  ちょっと拗ねたような口調で言うと、周防は椅子に座ったままさらに近づいてきて、真那人に身を寄せ顔を近づけてきた。  なぜか、真那人の鼓動が普段とは違う動きをするので、自分でも内心驚いた。 「い、いや、別に……ンっ」  抵抗しようと思ったのだが、周防の唇が真那人のそれに重なった。  実は、真那人はこれがファーストキスだった。色んな相手と関係を持っていた真那人だが、キスを避けてきた。“キスは本当に好きな相手とだけ”なんてキレイな理由ではない。  まぁそれもあながち違うわけではないが、好きでもない相手と唇を合わせるのが嫌だったのだ。

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