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第21話

「同じ事務所にいる頃から、憧れてたんすよ。それで、気付いたら好きになってたんすよね」 「拓実……」  あまりの衝撃に、頭が追い付かない。確かに、昔から拓実は懐いて慕ってくれていたようだったが、そんな気持ちを抱いていたなんて知りもしなかった。 「ごめん、俺……」  気付かなかったことには申し訳ないと思う。それに、拓実は可愛い後輩だが気持ちには応えられないだろう。  「いや、いいんすよ。分かってますから」 「どういう意味だ?」 「真那人さん、周防さんが好きなんすか?」 「は!?」 「いや、そうなのかなと思っただけっすけど」 「お前、周防さんとこにいるんだっけな」  周防の事務所で見た、ファイルの写真を思い出す。 「そうっすよ。真那人さんいないんなら前のとこにいても意味ないなと思ったんで。心機一転ってやつっす」 「へぇ……」 「真那人さんと周防さん、仲良いみたいじゃないっすか。それに周防さん、いつも『真那人は凄い』とか『あいつに敵うヤツ出てこないな』とかめっちゃ褒めちぎってて、普通じゃないなって」 自分では分からなかったが、真那人は顔をますます朱に染めた。 「は、はは。それだけで勘繰りすぎだって、お前」 「そうっすかね?」  真那人は苦笑した。そうだ。たったそれしきのことで、周防が自分をどう思っているかなんて推し量れるはずはないし、自分自身の気持ちだって分からない。  周防は単なる……。

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